. Communique of the Third Session in Paris, France in Japanese |
第三回総会の最終声明 1985年4月25−27日 パリ、フランス
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I
平和と安全保障 II 世界経済の再活性化 III 開発に対する国際協力 1. 1984年5月に開催されたユーゴスラビアのブリオニ会議以後、国際緊張の緩和に向けいくつかの兆しが見られた。米ソ間の核・宇宙兵器に関する会談が開始され、それが生みだした何らかの全般的環境改善は、我々も歓迎するところである。 かなりの経済成長を達成した国もいくつかある。しかし、対外債務危機問題は、とりわけラテン・アメリカに対する債務返済のリスケジュール取り決めにより暫定的にコントロールされてきたかに見えるが、依然として世界経済の脅威として存在している。
2. 進展の兆しにもかかわらず、世界の将来の針路について政治、戦略、経済面での深刻な懸念は依然として残っている。数カ国については暫定的に解決したものの、債務問題は依然として深刻であり、長期的解決策が待たれている。アフリカでは、300万の生命が干ばつのため危機に瀕している。世界中からの緊急援助はあるものの、このようなことが再び起こることのないよう中・長期的解決策が望まれる。
3. 我々は米ソ会談の幕開けを歓迎し、こうした会談が具体的合意をもたらすことを切望する。まず、軍備制限における危機の解決策に着手しなければならない。従って、米ソ会談の早期開催は極めて重要である。
4. 軍拡競争は、超大国間の深いミゾと認識のずれの結果である。このような問題は、政治レベルにおいてのみ核心をつくことが可能である。我々は、核兵器の保有ならびに核・通常兵器競争の激化は人類に最も重大な危機をもたらすと断言する。我々は米ソ両国に対し、軍事面にさえ存在する共通点を見いだし、その上に一層の合意を築いていくように勧める。例えば両国は下記に合意することを共同で表明すべきである。
◇ 核戦争による勝利はあり得ない。従って核戦争があってはならない。 ◇ 軍備力は、低水準で均衡が求められるべきである。 ◇ 軍事費を現在より低く抑える。 ◇ 安定を脅かす兵器より、安定に役立つ兵器を選ぶ。 ◇ 軍事的優位より、均衡を求める。 ◇ 相手国の正当な安全保障への関心を尊重する。
5. ジュネーブ交渉に対する信頼をより広く浸透させるために、我々は核大国に対して次のことを勧告したい。すなわち、1972年の弾道弾迎撃ミサイル制限条約を遵守し、宇宙での軍拡競争を中止して交渉期間中の核実験禁止を約束することである。さらに我々は、世界が求めている建設的成果を実現のものにするために、超大国がジュネーブ交渉を最優先するよう求める。
6. 軍備制限ならびに軍縮交渉の将来性を評価するために、カウンシルはジャック・シャバンデルマス氏の包括的な報告書を受領した。この報告書は、同氏が議長を務めた国際専門家会議(注)の結論に基づいている。我々は、可能な限り低水準の軍備で均衡を保つ安全保障を確立させるため、核・通常・化学兵器を含むあらゆる攻撃用武器の大幅かつ検証可能な削減を呼びかける。 Constantine Ene (ルーマニア)、 Pierre Lellouche (フランス)、 Carlos Ortiz de Rosas (アルゼンチン)、 Douglas Roche (カナダ)、 John Roper (英国)、 Francois de Rose (フランス)、 Engene Rostow (米国)、 Walter Stutzle (西独)、 Anders Thunborg (スウェーデン)
7. 我々はまた、非拡散条約(NPT)の制約期限の問題について討議した。同条約に調印した核保有国は自らの義務の遂行を怠ってきたが、同条約に調印した非核保有国は条約を遵守し続けてきた。その他の国は条約を批准しなかったか、もしくは条約の規定を遵守してこなかった。我々は、条約関係国すべてに対して次期会議においてNPTの改善と期限延長を達成するよう要請し、非調印国に対しては条約の精神に基づいた行動を促したい。
8. 軍事対決を阻止するため、我々はすべての国々とりわけ超大国に対して、国連憲章を尊重し、武力行使を自粛するよう勧告する。
9. さらに、カウンシルは下記についても呼びかける。
◇ 世界の多くの地域で見られる紛争を回避し終結させるための、通常兵器装備の不均 ◇ 化学兵器の生産・貯蔵の検証可能な禁止および現に貯蔵しているものの一定期間内 ◇ 国際衛星監視機関の設立など、国際的な検証技術能力の開発。
10. ヘルシンキ条約調印の10周年にあたり、我々は欧州唯一の非調印国であるアルバニアが、ヘルシンキ原則に賛同するよう働きかけていく。
11. 超大国、その同盟諸国およびその他の諸国間の信頼関係は、共通の利益がある重要な分野における合意を通して強化されうる、と我々は強調したい。これらの合意には、環境の一層の悪化阻止、地球大気汚染への取り組み、人口の爆発的増加の抑制手段等を支援することも含まれる。我々は次期総会においてこの問題を取り上げ、環境、人口、開発が相互に絡む諸問題に政治レベルで取り組める方法を考慮する。
12. オルセグン・オバサンジョ将軍は、開発途上国における軍事費に関する高級専門家会議の報告書を提出した。(注)この報告書は、開発途上国の軍事費支出が、正当な安全保障への懸念を満たすためであることに疑いないものの、それは開発計画に悪影響を及ぼしており、国内・地域内緊張ならびに紛争に油を注いでいると結論づけた。軍事費の支出水準は、安全保障面での現実的ないし想定上の必要性のみならず、兵器生産国からの圧力、供給者間の競争および政治的介入によっても左右される。超大国間の敵対意識と軍拡競争も、開発途上国の軍事支出水準に大きな影響を与えている。さらに、開発途上国への増大しつつある高性能な武器の移転が新しい不安と依存を生みだし、開発活動用の資金の横流しに一役買っている。 13. 開発途上国における軍拡抑制の努力は、これらの要因に対処することで初めて達成されうる。関係国のすべてが、有効かつ協力的手段を地方、地域、国家、地球レベルで採用し、軍事支出を削減すると同時に資金を開発目的のために振り当てる責任を負っている。こうした措置は安全保障を強化し、近隣諸国との平和共存の機会を高めていく。紛争の現実的もしくは人為的原因を除去しうる国際的処方箋はない。すなわち、このアプローチは個々の地域と状況によって異なるのである。
14. オバサンジョ将軍の報告書に提案されているように、我々は一連の使節団の派遣を通して、開発途上国・先進国双方に対し個別または共同で軍事費削減の指針となる原則を受け入れるよう働きかけていく。
15. 我々は、特に下記の実現を要望する。 ◇ 不可侵条約の締結、武器購入の相互抑制および信頼構築措置の採用等の地域間協 ◇ 地域レベルでの武器移転抑制の可能性を調査すること。 ◇ 地域的平和維持活動のための資金援助取り決めを提案すること。 ◇ 開発途上国における公平かつ公正な政策を奨励すること。 ◇ 必要な時期と場所で平和へのイニシアチブを支援し、国内・地域紛争の平和的解
16. 中米に関しては、我々はコンタドラ・プロセスを強く支援する。我々はさらに欧州と日本が、米国とともに外部からの干渉なしに平和と安全の基礎を築き上げる遠大な経済援助と協力計画のイニシアチブを取るよう勧告する。
17. 我々は、南アフリカの黒人による権利平等への要求と反アパルトヘイト闘争が血の弾圧を受けていることに憤りを禁じ得ない。我々は、アパルトヘイトを国際平和と安全に対する緊張と脅威の恒常的源泉の一つであると考えている。
18. いくつかの国々における近年の改善にもかかわらず、以下の理由によって世界経済危機への懸念は残っている。
(1) 主要先進工業国経済における低成長と失業の継続。 (2)
先進工業国、とりわけ米国における恒常的かつ構造的な財政赤字が (3) 法外な貿易不均衡。 (4) 特に米ドルに見られる為替レートの過度の変動。 (5)
多くの国で、保護貿易主義の圧力が高まり自由貿易に対する障壁 (7)
これら諸問題を悪化させる継続的な貿易不均衡および米国経済の
19. 高金利、強まる保護貿易主義、そして低成長は、債務問題が抱える時限爆弾の起爆スイッチとなりうる。
20. 米国の思い切った赤字削減は、失業問題のような他の国々と共通の重要懸念事項に対する政策とともに、経済成長率の回復をもたらす利下げという形で、多くの国の経済活動に刺激を与えるはずである。さらに赤字削減は、いくつかの国がより刺激的な政策を遂行する機会を増やしうる。
21. 上記の点を踏まえ、我々は各国政府に対して、ガットの新ラウンドを支援するよう、また為替レートの過度の変動と不均衡が存在し続ける限りいかなる貿易交渉(貿易外取引を含む)も不成功に終わることを認識するように強く勧告する。金融市場に集まる、約60兆ドルにのぼる国際金融の大きさからすると、2兆ドルという年間世界貿易高は相対的に規模が小さい。貿易交渉は単に世界貿易の一部に影響を及ぼすのみで、資本の移動には関係しないことから、こうした交渉が単独で世界経済の諸問題を改善することはできない。我々は、通貨面における行動なくして貿易面の新ラウンドの成功はありえないと確信している。
資金の流れと通貨価値の安定を達成するため、経常収支の均衡を図るさまざまな措置を至急とるべきである。現在の巨大な不均衡と構造問題は、主要経済大国間とりわけ欧州内および欧州・北米・日本間の政策協調を改善する緊急対策を必要としている。
22. 早急な進展には、貿易と通貨の二つの問題を切り離して対処しなければならないだろうが、我々は上記で指摘したように、国際通貨問題の解決と貿易との関連にはっきりと取り組まなければならないことを認識している。
23. ある充足感が広がっているにもかかわらず、債務問題は世界経済の安定に対する危険な脅威として存続している。
開発途上国の累積債務総額は、ラテン・アメリカにおける返済計画の繰り延べにもかかわらず上昇している。開発途上国の債務だけで1985年末までに9千億米ドルに達し、年間の利払いは1千億米ドルにのぼっている。国際的債務の累積とその結果である国際的流動性危機は、先進工業国にも波及し民間企業による債務によって一層悪化している。1984年のロンドン主要先進国サミット参加者は、この分野において対策を講じることの必要性を認めた。この問題の重大性に対するこのような認識は、緊急行動によって補わなければならない。その場しのぎの解決は今日まで問題を長引かせるだけであった。債務問題には今こそ、債務国・債権国双方の政府、国際通貨基金(IMF)および債権銀行のそれぞれによる共通利益のための責任分担に基づいた、恒久的解決策(複数年度にわたる債務繰り延べ)が必要とされている。
債務規模が拡大し続ける中で、開発途上国の債務返済履行能力は低下の一途にある。債務履行義務への努力が、それぞれの国の経済・社会の発展を妨げている。
24. さらに我々は国連の、とりわけ国連教育科学文化機関(UNESCO)および国連貿易開発会議(UNCTAD)の多国間システムの弱体化を懸念している。
25. 最後発開発途上国(LDCs)問題は極めて深刻である。我々は、国際専門家グループ(注)による提言に基づいたオラ・ウルステン氏の提案に沿った行動を推し進めるため、下記の措置を促進する。 (注) ウルステン氏に加えて下記の諸氏が参加した。Just Faaland (ノルウェー)、 Orville Freeman (米国)、 Mahbub ul-Haq (パキスタン)、 Ivan Head (カナダ)Frank Judd (英国)、 A.M.A. Muhith (バングラデシュ)、 Jan Pronk (オランダ)、 Zul-Kifl Salami (ベニン)、 Jean-Claude Trichet (フランス)
◇
技術移転および専門家の育成を含めたLDC諸国に対する援助を、 ◇
LDCの二国間債務負担を、例えば二国間政府開発援助(ODA)債務の ◇ LDC諸国の商品に対する先進国の関税・非関税障壁を撤廃すること。
26. 我々はLDC諸国に対し、経済改革および均衡のとれた、とりわけ成長と開発を加速するために農業改革と工業化政策間の均衡のとれた経済政策を積極的に推進するよう呼びかける。
27. 悲惨な状態にあるアフリカは、国際行動を緊急に必要としている。我々は国際社会に対し、想像を絶する規模の惨事を防止するために不可欠な緊急援助を供与する連帯感を、行動で示すよう呼びかける。
28. 今後同様の惨事を再発させないためにも、LDC諸国における人的能力、組織およびインフラストラクチャーの強化を目的とした遠大な中・長期開発計画を支援する目的の財源の援助国による供与が不可欠である。
29. 我々は、今年創立40周年を祝う国連機関が人類にとって重要な問題、すなわち軍縮、安全保障、平和および世界開発の検討と解決に極めて重要な役割を果たすと確信している。
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