. Communique of the 2nd Session in Brioni, Yugoslavia in Japanese

mokuji.jpg (1569 バイト)


インターアクション・カウンシル

第二回総会の最終声明 

1984年5月24−26日 

ブリオニ、ユーゴスラビア


I.      債務危機と債務管理
II.   開発
III. 貿易と保護政策
IV.  政策・制度の協調
V.    国際通貨改革
VI.  平和、安全保障および軍縮

 

1. インターアクション・カウンシルは、世界平和と発展に多大な影響を及ぼしている諸問題に対する強い懸念を禁じ得ない。この懸念については、すでに1983年11月の第1回ウィーン会議においても表明したが、過去6カ月間に発生した事件やその傾向によって一層深刻なものとなっている。

 

2. 二超大国間に有意義な接触が事実上欠落していることによって、真空状態が国際レベルで発生し、想像を絶する壊滅的結果をもたらす核の危険性は増大しつつある。軍拡競争や開発途上国間の紛争激化は、開発のために緊急に必要とされる資源の大半を浪費している。真空状態は先進国と開発途上国の関係にも発生し、繁栄と開発の見通しを危うくしている。

 

3. とりわけ先進工業国における膨大な赤字が高金利をもたらし、それが開発途上国の累積債務負担を悪化させていることから、世界的な通貨・金融取り決めの安定性は今日疑問視されている。同時に、貿易の取り決めは保護主義によってますます苦境に追い込まれている。我々の見解としては、こうした状況を支持することはできない。決断力があり構想力に富む指導者の出現が、各国政府、国際グループおよび機関、民間部門、さらに個人レベルで必要とされ

 

ている。実現可能な、そして人類にとって不可欠な建設的解決策を成就するためには、すべての人がある程度の犠牲を受け入れる必要性を認識しなければならない。

 

4. 最後発開発途上国に対する援助の増強には、国際的な連帯と人類共通の利益を基盤とした特別な努力が必要とされている。すでに最後発というハンディを負うこれら諸国は今日、国際的な経済システムの混乱から大きな痛手を受けた上に、自然災害に直面しているのである。

 

5. 我々は、人道主義、平和、軍縮および世界開発を進める上で直面する主要問題を協議し解決するにあたり、国際連合が極めて重要な役割を担っているという確信を再度表明した。

 

6. 現在の平和および開発問題は、危機発生の都度にとられる単なるその場しのぎの手段では解決し得ない。ヘルムート・シュミット氏を議長とする金融専門家グループ(注)による提言に基づき、我々は通貨、金融、債務の危機的局面に対処しうる現実的行動の可能性を検討した。我々は、持続的な世界の繁栄の復活には南北、市場経済と社会主義経済、石油の輸出国と輸入国、債務国と債権国、程度の差はあれ発展途上の国々、政府および国際機関と民間部門(とりわけ銀行)など、あらゆる部門による責任ある協調的行動が必要である、と断言する。


(注)シュミット氏に加えて下記の専門家が参加した。
Aldo Ferrer (アルゼンチン)、 Milton W. Hudson (米国)、 Fritz Leutwiler (スイス)、 松川道哉 (日本)、 Abdul Aziz Al-Quraishi (サウジアラビア)、 I.G. Patel (インド)、 Mamoudou Toure (セネガル)、 John Williamson (英国)

 

7. いくつかの重要な原則が尊重されなければならない。

◇ 経済政策は、短期的配慮のみならず長期的結末も考慮した指針に基づくべきでる。

◇ 国際経済、金融、通貨協力に携わる諸機関を強化維持し、世界経済と開発における
  現在と未来のニーズに適応させるべきである。

◇ 国際社会が直面している経済困難の主要因となっている今日の世界的軍事費の水準
  にみられる経済的浪費は節減されなければならない。

◇ 人的資源の開発(開発途上国における技能と管理能力の改善)は経済・社会の発展
  に必要不可欠であり、さらに促進されるべきである。

◇ 天然資源の枯渇や生態系の衰退が長期にわたり経済にもたらす悪影響について大き
  な関心を払うべきである。

◇ 経済活動の最終目的は、人々に利益をもたらすための福祉の向上と人権、文化価値
  の尊重に置かれるべきである。


I 債務危機と債務管理

 

8. 債務問題はすべての当事者の行動によって連帯的に創出されたものである。従って、すべての関係者は解決策を連帯して模索する責任を負っている。世界は、賠償金および戦争債務に関連した非現実的な資金の移転を求めたことから第一次・第二次両大戦国に生じた惨事を繰り返してはならない。中央銀行間の協力と国際決済銀行(BIS)および国際通貨基金(IMF)による巧妙な対応策は、これまでのところ債務危機の抑制に成功している。開発途上国における経済状況の深刻さと先進国におけるいくつかの商業銀行の困難を考慮すれば、開発と債務問題に反応するよりは、管理のための実践的行動を提案するほうが重要であることが明確になる。債務・債権国双方の問題に対する包括的解決策を講じることが今や急務である。上記提言には、そのような解決策の立案に適用されるべき原則も織り込まれている。重大な国際危機を回避するために、この任務は最も重要なものとなる。

 

9. 債務国は、開発計画を世界銀行とともに促進してきたように、IMFとの間でも適時に合意された現実的調整計画をともに推進していくべきである。このような計画には、経済成長と開発を再開させうる措置と、国際収支の持続的改善策の組み合わせを織り込む必要がある。現在のIMFの重要な役割は、たとえ不評であるとしても、国際収支もしくは債務の履行問題に直面している国々と調整計画を協議することにある。IMFのコンディショナリティー(条件内容)は不可欠条件で、これを満たさなければ融資はありえない。そのコンディショナリティーは、債権国・債務国双方の利益ならびに関係諸国の社会・政治状況を考慮に入れなければならない。将来提案される条件は、債務国の経済・社会・政治組織、人々の生活状態、さらに開発のために絶対的に必要な資金の入手などに深刻な影響を及ぼすようであってはならないし、経済および社会の持続的な開発と成長の再開を妨げてはならない。

 

10. 近年多くの国で巨額になった資本投資は、債務問題を一層悪化させており、各国は資本を逆流させるために有利な状況を創出すべきである。同様に、民間の直接投資をさらに誘導すべく努力を重ねるべきである。そのために必要なのは、何よりも投資国および被投資国双方の利益と懸念を反映した現実的為替政策、国内価格の人為的操作の回避および海外投資に対する官僚的規制の排除である。


II 開発

 

11. 開発途上国における開発促進政策は、各国の経済状況や目標を考慮に入れ、開発への集中的な国際協力のために適切な状態を保つことを目的とすべきである。安易な一般的解決策は存在しえない。すなわち進展は一歩一歩達成されるものなのである。

 

12. 債務危機は中所得国における近年の開発停滞の主要因となっており、交易条件の悪化も、特に多くの低所得国において決定的な要因となっている。天災や気候の大異変が多くの開発途上国の絶望的な状況に一層拍車をかけている。多くの地域においてなお止めどもなく続いている人口増加は一人当りの所得低下を意味する。開発の再開にはまた、自らの努力が最重要視される開発途上国自身、西側先進国および中央計画経済など、関係諸国すべての貢献が必要とされる。

 

13. 東西両陣営の先進国は貿易と援助を増強し、また近代化と調整すなわち、輸出と債務履行に不可欠な技術移転を促進させる特別な責任を担っている。開発を目的とした国際機関による貢献を大きく減らした最近の政策は誤りであり、先進国の利益そのものに反するものである。国際開発協会(IDA)の増資は、世界銀行が提示した水準で早急に締結されるべきである。さきに分担金に合意したすべての国の拠出意志の有無にかかわらず、これは決行されるべきである。

 

 

14. 世界銀行グループ経営陣の運営拡大と強化を図るためのイニシアチブは、強力に支持されるべきである。とりわけ、世界銀行の資本は大幅に増大させるべきである。多国間技術援助のための中心的機関である国連開発計画(UNDP)は、有効かつ持続的経済開発の基盤となる人材の向上という開発途上国経済においてきわめて重要な役割を担っていることから、さらに支援強化されるべきである。

 

15. あらゆる開発段階にある開発途上国は、自らの開発に対し最大の責任を担っている。多くの東アジア諸国の経験は、技術移転、目的の一致、各国の価値観と条件に最も有効な方法である人的資源開発の強化、人口計画、国際貿易がもたらす可能性の利用、直接民間投資を奨励する政策の有益な効力を立証してきた。さらに、開発途上国は地域・経済・技術協力を通してより組織的な方法で相互に助け合うことで、相当の利益を享受しうる立場にある。

 

16. 最後発開発途上国に固有の問題には、国際社会全般からの強力な援助を通じた早急かつ持続的配慮が必要である。これらの諸国の所得を高め、国そのものの能力を強化するために、貿易および技術協力の分野における措置とともに、譲与的援助の増強が早急に必要とされる。

 

17. これらの国々の虐げられた人々の資源を大幅に増大するために、民間組織とりわけ法人および銀行とともに、我々は世界中の世論を動員するための広範なキャンペーンを繰り広げる考えである。

 

III 貿易と保護政策

 

18. 債務危機の解決と世界経済の持続的な成長の復興は、各国政府の貿易政策に直接依存している。すでに世界貿易の半数を超え、そして一層その数を増す通商活動のかなりの部分が、保護貿易主義措置の制約を受け、あるいは補助金により歪曲されている。保護貿易主義や国際貿易関係の悪化傾向を阻止し、改善させなければならない。

 

19. このためには、関税および貿易に関する一般協定(ガット)の効力を断固として再活性化させ、ガットが包括する相互的権利義務の多角的秩序に各国政府を回帰させる努力を払わなければならない。

 

20. ガットの計画を完遂する第一段階として、すでに合意された義務を履行する努力を強化すべきである。貿易交渉の新たな展開は、経済ナショナリズムおよび保護貿易主義の蔓延阻止と、世界市場の自由化を目標として開始されるべきである。しかし、この結果が効力を発揮するまでは、急を要する他の行動もまた必要とされている。

 

21. 追加手段として主要貿易国は、多国間監視のためのガットの枠組みの中に公式・非公式の輸入制限活動すべてを委ねるべきである。これら諸国は、ガットの規約外での新たな保護措置もしくは制限活動を自粛し、かわりに現在の国際規約や法律の拘束力低下を阻止し、現存する制約を弱めるために相互に合意しうるプロセスを開拓すべきである。

 

22. 先進国は、特に開発途上国からの輸出に対する関税および非関税貿易制限を無差別に緩和すべきである。さらに先進国は、農業・繊維・鉄鋼などの特定部門における過剰生産を削減し、バーター貿易を自粛すべきである。単一ないし数種類の産品の輸出に依存している諸国の輸出所得に定期的に発生しうる中断を防止するため、輸出収入安定保障制度(STABEX)を拡大したような国際的取り決めが案出されるべきである。

 

23. このような自由化に対して一部の政府に強い抵抗が見られた場合には、それ以外の国で同意できる自由化規約を基盤に、より協力的で自由な貿易関係を模索する努力はなされうる。そのような規約には、加盟国相互間では保護主義を拡大させず、保護主義の不法部分を排除し、現存するすべての制限を自由化するといったコミットメントが含まれる。このような規約は、将来加入を望む国々のための門戸を開いて置く。

 

24. 貿易拡大の道をこれらの国々に開放するため、保護主義が有する制限条項を徐々に縮小させるべく、地域的ないしより広範囲にわたる自由貿易取り決めの交渉も考慮されうる。

 

IV 政策・制度の協調

 

25. 最近の米国経済の回復が、とりわけ先進国に有益な影響をもたらしていることは広く認識されており、それは対米輸出の増加とその結果である輸出主導型成長において特に顕著である。しかしながら、このような経済の回復には重大な欠点があり、長期的には持続しえない。極端に高い実質金利は債務問題を誇張させ、世界の生産的投資と雇用機会を減少させる。高金利は世界最大の国家経済への大規模な純資本流入を誘発しており、これは中・長期的に受容しうる規模ではない。

 

26. ドルに対する信頼喪失は、新たな不況を招く恐れとともにドル安を招き、米国連邦準備制度理事会にさらなる金利引き上げを強要する危険性を秘めている。従って世界経済の持続的な再活性化にとって、米国の財政赤字を大幅に削減する対策を早急に講じる必要がある。

 

27. 先進国サミットを含む主要先進工業諸国間の経済政策の協調メカニズムは、近年効果を上げていない。経済政策よりも確実で責任ある政府間協調が明らかに急務である。この目的を達成するためにも、我々はこのような組織的協調、とりわけ主要国すべてが責任ある財政政策を早急に採ることの重要性と緊急性を、現役の政治指導者達に伝える努力をしていく。

 

28. 国際協力もまた、柔軟性を欠く制度によって弱められている。例えば、世界貿易と金融問題は密接に相互作用しているにもかかわらず、現在の危機に対し包括的に対処しようという努力が見られない。

 

29. 経済大国間の基本的対立および資金分担の責任は、国際経済機関の差異に反映されている。IMFは、ほぼ全面的に短期的財政やマクロ経済の問題点に焦点をあてている。いくつかある国際的な開発銀行は、農業と工業に対する新規プロジェクトや社会・経済のインフラ作りを主に支援しており、ガットは貿易紛争への部門別対処と、資本の流れと為替動向にとらわれずに財の動きを自由化させる世界規模の努力を定期的に行うことに専念してきた。

 

30. 主要な国際経済機関と世界銀行の開発委員会との協力体制を改善することが必要である。ガットとUNCTAD(国連貿易開発会議)との協力もまた、強化されるべきである。我々は、これらの協力を支援していく所存である。

 

V 国際通貨改革

 

31. 不安定な関係にある現在の通貨取り決めは、一般的に満足のいくものではない。改革への議論は多くの会議で進展してはいるものの、現在これらすべての論議の全体像を一人としてつかんでいない。いまだ主要経済大国間における新たな合意出現の兆しは見られない。我々は、通貨改革に関する合意のために努力を惜しまない。

 

32. 我々は、これらの問題に関する検討を続けていくものの、現時点においては通貨改革について特に下記の点を強調したい。

 

◇   為替レートを凍結せずに、ドル、ECUおよび円をより安定させる必要性。
    しかしながら、これは関係諸国における不十分な経済実績の対価として達成されて
    はならない。

◇   数年間にわたるIMF特別引出し権(SDR)の限度額に、年次別上限を設ける
    必要性。

◇   将来のIMF増資の準備の必要性。この増資は、各国政府らの借入れ増大の取り
    決めによって達成の見込みがあり、中期調整計画への融資を可能にするだろう。

 

33. 我々は、通貨、金融および債務問題に関する国際会議招請に、関係者が重要性を感じていることを承知している。上記のように、我々は現在の危機に即応する手段の必要性および長期的に持続しうる健全な通貨金融の世界システムを再構築するという基本的措置の必要性も認識している。長期および短期的措置が、相互強化の要素を持つべきであることは言うまでもない。

 

34. 我々は、中・長期的な国際協定と建設的変化への可能性を明確にするため、これらすべての問題を継続的に検討する必要性があることを強調する。我々は、この問題を次期総会で徹底的に検討するつもりである。長期的に見て不可欠なのは、より安定度の高い為替レートと国際収支状況に関連する金融・財政政策における各国政府の一層の規律であることは明白である。

 

VI 平和、安全保障および軍縮

 

35. 米ソ首脳対談の完全な決裂は超大国間の関係を険悪にし、地域的不安定を悪化させ、地域間紛争に両国が果たせる建設的役割の可能性を減少させてしまった。

 

36. 我々は、両国首脳に対して可能な限り早期に直接対話を再開することを求め、この目的達成のために関係国の指導者たちが協力することを要請する。たとえ超大国の最高指導者が互いに顔なじみになるという事実以上の進展は見られなくとも、この種のサミットの果たす役割は大きい。政治的イデオロギーにとらわれず、すべての政府間でコミュニケーションは維持されなければならない。緊張緩和に関する提案を交渉相手に提示する前に公表することは、後向きの合意を余儀なくしてしまう危険性を含むので、回避すべきである。

 

37. 多くの開発途上国は現在、開発を進める上で必要な活動を紛争により妨げられている。従って、開発途上国への東西対決の波及を回避させるために、全精力が注がれるべきである。中央アメリカのコンタドラ・グループや東南アジアのアセアン等による平和に向けての地域的努力は、促進強化されなければならない。我々は、平和と開発の推進のみならず、関係国の民主主義体制を一層強化しようとする努力に対する強い支持を表明する。

ichiban.jpg (1715 バイト)  mokuji.jpg (1569 バイト)  wpe1.gif (2483 バイト)

markS1.GIF (2214 バイト)

InterAction Council
東京事務局
〒106−0032

東京都港区六本木3−16−13−706
電話:(03)3505−4527
ファックス:(03)3589−3922
JEMAIL.jpg (1771 バイト)email3d.gif (19981 バイト)