. Communique of the 14th Session in Vancouver, Canada in Japanese

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インターアクション・カウンシル


第14回総会最終声明書



1996年 5月19日ー22日


カナダ、バンクーバー

 

 






世界の現状


1. 今日、世界の政治・経済情勢が、さらにグロバール化してきていることは明白であり、それに伴う変化の嵐は急速に国内的・国際的政治論議の枠組みを方向付ける原動力になりつつある。しかしながら今日までのところ、各国政府当局の対応は不十分で一貫性がないことも明白である。



2. インターアクション・カウンシルは、人類の幸福を左右する世界の諸問題を検討する年次総会において、過去10年以上にわたって関心を集中し続けてきた諸問題が引き続き存在していることに大きな懸念を表明した。それらは、依然として悪化する自然環境、あまりにも多くの開発途上諸国における貧困の継続、開発途上国における人口増加の不穏な現象とその対極にある先進国における物的消費の拡大、大量殺りく兵器を含む武器の拡散、経済進歩の不平等な効果、特に女性や小数民族の社会参加を巡って見られる人間の尊厳への不十分な保護などである。こうした状況の一つひとつ、そしてその組合わせが、国際社会の安定を脅かしている。


こうした広範な動揺状態を回避するためには、国際社会全体の持続的かつ協調的な関心が必要である。当カウンシルは特に、すべての国による軍事費の削減および非民主的国家や国際的に認知された諸人権への侵害を黙認している国々に対する武器輸出を規制することを勧告する。



3. 今世紀も終末に近い現在、三つの大陸で繰り返される国内紛争や民族闘争をめぐる執着と野蛮性を見れば、人類が今もなお残虐な行為性を棄て切っていないことは明白である。アフリカ、アジア、欧州などの地域では文明的行動性という貴ぶべき概念が見向きもされなくなってしまっている。こうした状況下の暴力と破壊、そして人間的苦痛はあまりにも苛酷で屈辱的で、局外にある者を嫌悪で課をそむけさせるばかりのものである。国際社会の関心と支援の減退傾向はますます明確になっており、当カウンシルを深く落胆させている。



4. 世界の主要な国際的協議の場に完全に参加できず、あるいは十分に代表されていない国々や地域ほど、国家としての特徴や国際行動面での変化が顕著である。ブラジル、中国、インド、ロシアといった主要諸国家の活力や複雑性は、先進工業国側の単なる好奇心や批判的不関与などより遥かに多くを必要としている。当カウンシルは、G7諸国に対し、中国およびロシア両国首脳レベルとの制度的協議を遅滞なく組織するよう強く勧告する。さもなくば、危険な断絶や悲惨な分解のリスクを冒すことになるだろう。



5. 貧困は今日もなお深刻である。10億人が1日100円以下で生きようと格闘している。毎年2億の子供たちが貧困が原因で死亡している。過去5年間における開発途上国に対する民間資金の流れは、(1995年には1670億ドルに達した)ように急増しているが、その8割は特定の12カ国に流入しただけである。今日、子供たちにとっては学校へ行くことより空腹のほうが重大な問題であるサハラ以南のアフリカ諸国には、民間資本は向かわない。さらに政府開発援助(ODA)は、実質では過去23年間で最低の水準にまで落ち込んだ。当カウンシルは、この下降傾向の逆転を訴えるとともに、援助効率を最大限にするために、民間資本を誘引できない最貧困国にODAを集中させ、家族計画および軍事支出関連の政策をその条件とするよう提言する。



6. 現在における人類の際立った特徴は、人間的利益や人間的ニーズの共通性である。共通した対処こそが人間的自信を回復し、幅広い人間的目標を達成する機会をもたらす成功の鍵であろう。今後の数十年の間に繁栄する社会は、こうした新しい現実が求める洞察力や献身を実行できるような政府を持つ国々である。これらの点に関する当カウンシルの最大の懸念は、政府、国際機関、民間部門の指導者たちが先進・途上諸国の双方で明白な高失業率、社会的不平等、政治的不安定を解決する経済政策と措置を今日まで立案できていないことである。今日みられる国際化(グローバリゼーション)と民営化(プライベタイゼーション)への傾向を巡って最も懸念される結果は、各国間および国内での所得と経済的便益性の格差の一層の拡大である。こうした格差は抑制されねばならない。





普遍的な倫理基準の探索



7. 世界経済のグローバル化は、すでに言及した多くの世界的問題のグローバル化に見合っているものである。しかしグローバル化は同時に、通常ではふさわしい関心を呼ばない領域、すなわち普遍的な倫理基準にも適用するのである。



8. グローバルな相互依存は、我々が相互に調和をとりつつ暮らすことを求めているので、人類には規則や拘束が必要となる。倫理は集団生活を可能にする最小限の基準である。倫理や自律心を欠いたら人類はジャングルに回帰してしまう他はないだろう。世界は立脚すべき倫理の基準を必要としている。当カウンシルはその意味において、1993年に「普遍的倫理」の奨励を宣言した世界宗教議会に感謝する。カウンシルはこの宣言を原則的に支持する。



9. その必要性を認識した上でインターアクション・カウンシルは、専門家会議に
「普遍的な倫理の基準」に関する報告書(添付)を要請した。当カウンシルは世界各地の諸宗教の指導者および専門家が一堂に会した専門家グループによる報告書を歓迎した。当カウンシルは、世界の信仰には共通するものが多くある、という同会議の結論を受け入れた。当カウンシルは国際社会に対し、同報告書で示唆された様々な具体的方策を熟考し、適切な行動を取るよう推奨する。世界のメディアに対し、こうした共通の価値観をすべての出版物により完全に反映するよう招請する。



 あらゆるレベルにおいて教育は、若い世代の心に普遍的倫理基準を植え付けるうえで決定的な役割を担っている。カリキュラムには、共通した世界的価値観が入れられるべきであり、他の信仰に対する「肯定的寛容」を促す方法ですべての宗教に関する理解を奨励すべきである。この点、世界の諸宗教が緊密に相互協力することが肝要である。世界の宗教の指導者、学者、学生を一同に集める世界信仰交流アカデミーを国連の制度として設置すべきである。世界指導者アカデミーを創設するという国連大学の最近の決定は評価に値する。



10. 政治活動は価値や選択に関わるものであり、従って、倫理は政治はもとより法律にも優先させなければならないという堅固な見解を当カウンシルは持っている。権力の現実に精通している元指導者たちが構成するインターアクション・カウンシルは、世界の諸機関に対し確立された倫理基準の優先性に専心し直すよう要請する。





安定した国際金融システムの創設



11. 過去10年程の間に外国為替および国際資本市場において多くの重要な進展が見られた。国際経済システムに新たな制約を課して新たな機会と挑戦をもたらしたこと、開発途上諸国への資本の流れの劇的な増大とその構成の変化、デリバティブ商品の利用の爆発的増加、国際金融取引の継続的拡大などがそれである。こうした進展は金融不安定のリスクも増大させた。安定は、開発途上諸国、金融システムおよび為替レート・システムの三つの領域で強化されうる。(添付の
専門家グループの報告書を参照。)



12. 資本市場の統合は資源のより良い配分をもたらし、また規律的効果も持っている。とはいえ主な困難は、開発途上諸国が資本流入やその逆の資本の流出によって撹乱されないように保証することである。資本の流動は、価格の安定と均衡ある成長に目標を定めた整合性のある持続可能な金融・財政政策および時宜を得た情報の普及に裏打ちされるべきである。この点、IMFの「早期警告システム」は支持されるべきである。



13. 金融市場における革新と取引の拡大は金融不安定のリスクを増大させる。しかし新しい金融商品の開発は投資家がより十分に市場リスクを確定し、測定し、分類し、価格づけし、管理することを可能にして、そのようなリスクに対処できるようにすることができる。金融市場の革新に伴って生じるリスクは、不適切な監視システム、不完全なリスク審査、リスクを過剰に負う方向に傾く補償システム、監督当局の不十分な調整を改善することで軽減されうる。 



14. 外国為替市場の動向は最も予想が困難で、かつ潜在的に最も破壊的である。これを改める必要性は広く認識されていることである。期待感は直接的に為替レートに影響するので、国内的にも国際的にも適切かつ持続可能な経済政策を基盤とすべきである。しかしながら、安定した政策だけで為替レートの安定が保証されるものではない。この理由から当カウンシルは、単一欧州通貨を1999年1月1日に導入するというEUの決定の重要な貢献を、国際通貨安定に多大に寄与するものとして認識している。この決定は、米ドル、日本円、新しい欧州通貨単位をリンクする「目標圏」の導入を可能にするだろう。勿論、これにはかなり高度な政治的意志とコミットメントが必要とされ、当カウンシルはそれを強く奨励するものである。











インターアクション・カウンシル第14回総会
 

出席者 

メンバー

(アルファベット順)

アンドリース・ファン・アフト(1976-1979 オランダ首相)

オスカル・アリアス・サンチェス(1986-1990 コスタ・リカ大統領)

キャラハン卿(1976-1979 英国首相)

ミゲル・デ・ラ・マドリ(1982-1988 メキシコ大統領)

マルコム・フレイザー(1975-1983 オーストラリア首相)

クルト・ファーグラー(1977,1981,1985 スイス大統領)

ヴァレリー・ジスカール・デスタン(1974-1981 フランス大統領)

ケネス・カウンダ(1964-1991 ザンビア大統領)

アブダル・サレム・マジャリ(1993-1995 ヨルダン首相)

宮澤喜一(1991-1993 日本首相)

ホセ・サルネイ(1985-1990 ブラジル大統領)

ヘルムート・シュミット(1974-1982 西ドイツ首相)

カレヴィ・ソルサ(1972-75,1977-79,1982-87 フィンランド首相)

ピエール・エリオット・トルドー(1968-79,1980-84 カナダ首相)

オラ・ウルステン(1978-1979 スウェーデン首相)



特別ゲスト


フレッド・バーグステン(国際経済研究所理事長)

マシュー・バレット(モントリオール銀行会長)


アイヴァン・ヘッド(ブリティッシ・コロンビア大学国際関係教授)

ウィリアム・ロックリン(米国企業家)

エミール・ファン・レネップ(元OECD事務総長)


M.E.J.フェルプス(ウエストコースト・エネルギー社会長)

アンドリュー・サルロス(カナダ金融界幹部)

モーリス・ストロング(世界銀行総裁顧問)

呉学謙(元中国副首相兼外務大臣)

アレクサンドル・ヤコブレフ(元ソ連大統領顧問)



招待ジャーナリスト



デイヴィド・クレーン(トロント・スター経済部長)

アラン・ドゥビュ(ラ・プレス編集長)


早房長治(朝日新聞編集委員)

フローラ・ルイス(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン)



事務局

ジャック・オースティン(組織委員長、カナダ上院議員)

宮崎勇(事務総長、前日本経済企画庁長官)

福田恒夫(財務局長)






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