1998 Latin America: Balance and Perspectives, Progress, Difficulties, Challenges in Japanese |
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民主主義と「統治」 成長と経済改革 国際社会への参加と競争力 生産の転換と技術革新 人的資源、貧困、不公平 将来を見据えて 1. 「ラテンアメリカ、均衡と展望 ― 進展、困難、挑戦」に関する専門家会議は1998年2月27日にメキシコシティにおいて開催された。添付した参加者リストを参照のこと。また本議題の資料の要約および専門家会議に関する"El Economica"記事も同時に添付。 2. 民主主義の進展は、いくつかの国の例に見られるように、民主主義が単なるうわべだけのものになり、政府も一向に変わろうとしないという潜在的危険を含み、民主主義と政府との間に断絶を生じさせた。公式発言や公的活動には社会的ニーズを考慮に入れず、また諸機関にはとがめは受けないだろうという感覚が広まっている。従って、相互依存の変数として、政治的「統治」、経済的競争力および社会的統合を融合させる必要がある。この目標を達成するために、ラテンアメリカ社会は足並みを揃えて民主的自己統治の能力を強化し、経済的競争力を増進し、社会的排斥や貧困に関連する主要問題と正面から取り組んでいかなければならない。さもなくばこの地域は、民主主義の近代国家群に属する上でより一層の困難に直面することになろう。 3. ラテンアメリカは、他の非OECD地域と同様に、制度的変遷の過程にある。この過程において基本となるものは、確実に機能しているプログラムは無視せず、いまだ欠如している部分を創出することである。この文脈の中で、市場制度を規範に従いかつ有効に強化することが重要であり、それによって市場は真に機能し、発展するだろう。例えば、対外貿易に関して、ラテンアメリカ経済は開放されたが、生産と貿易がこれまで以上の一致を見せ、うまく統合されるためには、生産基盤をさらに強化していかなければならない。 4. 市場経済は、必要な規則やガイドラインを策定し有効に機能する市場が必要とする諸制度を創設するために、国家が参与することを求めている。さらに、国家は市場の欠点を克服し、所得を再分配し、貧困と闘わなければならない。従って、国家と市場の十分な均衡は絶対的必須条件である。 5. ラテンアメリカは、自己の威信が地に落ち、失策全てが非難されていることから、民主制度を改善する必要がある。ラテンアメリカにおいて制度の改善は最優先的課題である。それは、政治改革を行えば立法機関が行政の力に対抗することが可能となり、各立法の過程がより効率的になることを意味する。政治団体のために共存と義務の規範を設定すべきである。それによって政治団体は問題を悪化させるのではなく、解決することができるようになる。ラテンアメリカの経験によると、政治団体はその第一義的機能の一つ ― つまり社会的要請との相互関係 ― に呼応できないでいる。翻って、労働組合は時代錯誤となりつつあり、その正統性を失いつつある。合意済み条件を遵守しない不快な政党に対する明確かつ有効な制裁システムを含む政治改革もまた必要不可欠である。 6. ラテンアメリカが取り組まなければならない最大の挑戦の一つは、統治能力を保証するために発想の妥当性と実行の妥当性を融合させることである。 7. 決定的かつ制御された基盤を持たずしかも歴史的経験を無視した民主主義の試行や実行は、統治能力を無力なものにしかねない。政府の権限をある程度制限し、立法府により大きな権限を付与することは、過剰な「議会主義」とそれに伴うマイナスの結果に導びつくかもしれない。他方、法案策定の過程を有効に組み込まない議会は、修辞学的性質に陥りかねない。 8. メディアの重要性が増しつつあることは、メディアが各オーナーの利益しか考慮に入れないことから、大きな懸念を呼ぶ問題である。その結果、メディアの力が強まっても常に良い成果を生み出してはいない。 9. 公的行動より変化する世論の傾向を重視する危険は常につきまとうが、政府関係者は投票に注目するよう進言する。なぜならば、投票はかなり移り気なものであり、またメディアからのメッセージに大きく左右される傾向にあるからである。 10. 現在の戦略が持続可能で公平な成長をもたらすには不十分であることを立証しているために、構造変化の過程は補足されるべきである。最近の功績が安定した条件の中でなされたことを尊重し、改革および成長政策を実行する上でこの挑戦と取り組んでいかなければならない。マクロおよびミクロ経済の要因がいかに相互に影響しあい、マクロ経済の一貫した制約がいかに相互を条件づけているかを理解し、また改革の過程と生産の基礎的作業における重大な変化によって生じた不均衡について理解することが重要である。 11. ラテンアメリカの問題を地球上の他の諸国の問題と切り離すことができないことから、開発政策の世界的概念は変更されなければならない。この文脈において、国際組織の機能修正は極めて重要である。政府や社会の刷新努力に寄与することにおいて、国際諸機関が取り組むべき問題に対するこれら諸機関の欠陥は明らかである。 12. 全てを手にすることのできる国など一つもないことから、関係者全てに責任をあてがう長期的総意を取り付けることが不可欠である。これは全ての経済の相互補完性を認識することを意味する。 13. 最重要諸国の経済政策の変化もしくは世界経済が国内にもたらす衝撃は、ラテンアメリカ経済に直接的な影響を及ぼす。これは、政府がマイナスの効果を中和する適切な政策を創出し採用するためにも難局と取り組まなければならないことを意味する。政府は孤立しないためにも最善を尽くして適切な手段を採らなければならない。 14. 1980年代から90年代にかけて世界的な変化が起こり、これは当然ラテンアメリカにも影響を及ぼした。この地域における変遷の過程は、一夜にして訪れるものではない。従って、ラテンアメリカはこうした構造変化による利益も得たが、代価も払っている。 15. 多くの諸国における民営化への過程は、現実的な目的 ― 時には相反する目的 ― を達成するとみなされる複雑な作業であるために、真の変遷をもたらしていない。にもかかわらず、考慮すべき基本的問題は社会的公平と効率である。 16. 成長と公平の間に補足的領域をもたらす経済政策さえ実行されれば、成長と公平の間に矛盾は生じない。つまり、寛容しうるマクロ経済の均衡、人的資源への投資、生産的雇用の増大と持続を探求する政策、急進的かつ大規模な技術のノウハウを確保することである。 17. 金融グローバル化のダイナミックスを国家経済に採り入れるために、細心の注意を払って計画された金融規制緩和手段を実行に移す必要がある。これは、支払い能力のある効率的金融機関を持つために金融システムを強化する必要があることを示唆している。ある意味で、金融の規制緩和は組織された金融の開発を補給する。「資本の管理に意味はあるのだろうか?」という疑問に対する答えは、金融および資本の流れのグローバル化は規制の如何にかかわらずラテンアメリカ諸国に影響を与えることから、単純とはほど遠い。いずれにせよ、とりわけ短期の投機的資本がかかわる場合にはその答えは肯定的なものとなる。 18. ラテンアメリカ諸国の中央銀行は、この地域の金融の脆弱性を強化する方法を学び、運営方針を改善するメカニズムを創出することが望ましい。 19. 世界経済における変遷は、現在われわれが経済的相互依存の下に生きているが故にラテンアメリカにも影響を及ぼしている。これは、各国政府に資本の恒久的流入、マクロ経済の安定化、競争力のある為替レートおよび貯蓄・投資の過程を強化するよう圧力をかけている。脆弱性は主権国家が受けるリスクに比例することは真実であるが、世界経済のダイナミックスを鑑みて、ある国が自国を守るためにとる意思決定の余地も僅かであることも真実である。 20. アジア危機は、ラテンアメリカを対外不均衡や不安定化という危険にさらさせた。これは、財政緊縮は必要であるし、少なくともある部分国内に与える衝撃効果を緩和する方法としてそれは維持されるべきであろうという明瞭な警告である。本年は、アジア危機の衝撃が不安定な国際資本市場に連動して天然資源やエネルギー価格の下落をもたらし、またそれに関連する国内部門などラテンアメリカの脆さを助長させることになろう。1998年にラテンアメリカが必要とする外部からの資金調達は1000億ドルないし1997年の25パーセント増しと予測されている。それを獲得するのは容易ではないだろう。 21. 金融投機は経済の実体に影響を与え、国家経済の堅実性あるいは悪化といった現象に結びつく。経済が健全で行政が優れていても金融不安による影響は避けられない。高水準の国内貯蓄率と外貨準備高、緊縮財政、時代遅れの為替レートの回避およびとりわけ厳しい規制と監督は金融不安が生じた時に脆弱性を緩和する主因であると証明されているが、そのような不安による影響から完全に遮断されることは不可能である。 22. ラテンアメリカは現在のアジア危機、あるいは1980年代の債務危機といった外的要因に対して自己防衛の体勢を今ではかなり整えてきてはいるものの、十分ではない。しかしながら1994年のメキシコ危機から学んだ教訓は、1997〜98年に生じた新たな危機がもたらす衝撃を緩和している。 23. 地域統合は重要であり、共通の立場を明確にするためにもこれは強化されるべきである。ラテンアメリカが一見解を示せば、われわれはもっと多くのものを入手することができる。こうした統合によって、国際的参加をラテンアメリカはより効率的に進められるだろうし、この目標はすでにいくつかの諸国が達成している。ラテンアメリカで現在統合を目指しているさまざまな動きのうち、5つはとりわけ経済がかなりの部分関連することから重要である。それらは、米国、メキシコおよびカナダが調印した自由貿易協定(NAFTA)、メルコスール、アンデス協定、中央アメリカ共同市場(Mercado Comun Centroamericano or MCCA)およびカリブ海共同体 (Comunidad del Caribe、CARICOM)である。貿易ブロックへの参加は生産部門の開発に影響を与えている。望ましいと考えられる経済区域の分裂という危険に鑑み、サブシステムあるいはサブ経済区域形成の必要性が注目されている。同地域のために提案される構造形態は、サブ地域経済区域が形成される方法に照らして、しばしば相互収斂性と呼ばれている。 24. ラテンアメリカ内部では、各国間の関係をより深くみつめる必要がある。まだ統合されていない諸国に何が起きるのだろうか。 25. ラテンアメリカの競争力は弱まっており、とりわけ「単産品国」を中心にこの地域を脆弱にしている。これは産品ごとの、そして市場ごとの輸出の多様化を通じて是正されなければならない。低賃金を基盤とする競争力ないしわずか一度の利益しか生まない生態系の劣質化は、エセ競争力あるいは疑似競争力として拒絶されるべきである。 26. 生産の転換は今日では開放経済の文脈における競争力の促進に集約されているが、各部門の諸側面への処遇や、中小企業の育成に関する限り弱点がある。これは国際化や輸出志向に関連する生産奨励政策策定の必要性をもたらす。 27. 対外投資は国家努力を補足するものであり、これと関連した技術面を過小評価してはならない。それは、固有の刷新能力や国際競争力をダイナミックに上昇させる基盤として、産業的・技術的ノウハウの能力を強化する。他方、国家貯蓄は生産の転換過程で必須とされる投資の発生にとって決定的に重要である。 28. ラテンアメリカの製造部門は過去数年間さまざまな変遷を経験してきた。輸出の分野での実績は好調だが、生産性と投資の成長は、国内需要の回復と対外競争力が弱いことから遅々としている。従って、新しい製品を加え新しい市場を開拓することで引き続き輸出を促進することが必要不可欠である。同地域の産業にとって未だに主な需要要因である国内市場における競争力を増強させることも同様に重要である。 29. 農業部門(畜牛および穀物生産)はかなり落ち込みが激しく、こうした状況が穀物と耕作地の調整に関連する生産能率を向上させ、それによる収益を上げる技術の導入を求めている。 30. 物理的インフラストラクチャーの創出は、開発の基盤として不可欠である。しかし、基礎教育も同様に開発を強化する人的資本の質を改善する上で不可欠である。適切な教育と人的資源に対する研修を施さない国はいずれも競争力もつかず不公平を是正することもできない。生産システムの変化とそれに呼応するあらゆる挑戦に照らすと、教育は近代化の過程において基本的な要素となっており、ラテンアメリカは教育システムを大々的に改善し、それに適応する能力を充実させなければならない。 31. ラテンアメリカはマクロ経済と関連の事項を優先し、社会政策を軽視してきた。これは所得と富との間の不均衡を強め、これまで達成してきたことに影響を及ぼす無秩序をもたらしかねない。社会的不均衡は無限に続くものであってはならない。 32. ラテンアメリカは再分配および社会結合手段として要求されるべき社会的権利を創出しなければならない。 33. 不公平と貧困層は減っていない。社会保障政策の効果はこれまでのところ限られている。社会支出は財政規律達成のための手段によって削減され、社会政策の適用は満足な更新のされかたをしていない。 34. 人口動態の問題はいまだ極めて深刻である。とりわけ南米では人口成長をかなり減少させた国がある。メキシコや他の中米諸国は目標を達成していない。前者は抑制プログラムによって良好な成果を達成しているが、一方で人口成長は伝統的に緩慢である。一般的にこの問題は、実際に進展があったとしても人口成長率は雇用の可能性や社会サービス補填にくらべると高いという問題は残る。 35. 公正性は貧困との闘いのみに限定されるものではない。その主要目標は「全てを受け入れる社会」に到達するために不公平を排除することにある。 36. 実際のところ、金融の利害、マクロ経済および短期的利益は環境問題に優先している。しかし真実は、われわれが現在居住し将来も住み続ける場である環境は、地球的にも地域的にもこの上なく重要である。同地域の経済分析のほとんどは環境や天然資源についてほぼ何も言及していない。これらの分析は地域開発の選択肢にとって重要であるにもかかわらず、人口集中地や天然資源(とりわけ再生可能な資源)の入手可能性の変動にかかわる環境の質にほとんど触れることがない。技術進歩に対するほどほどの参与、強化された世界貿易、国際市場における地域生産物の価格の低下は天然資源への圧力を強めている。人口増加と前述の事実に対する国内需要の増大は、開発戦略を実施するにあたって環境と天然資源を考慮に入れるべきだという結論に導く。 37. 南米の危機は北米諸国にも影響する。これは、なぜ長期的傾向を地球的見地から検証しなければならないかの理由である。この観点から始まり、地域不均衡を回避するために必要なことも共に明確にすべきである。 38. 現在のニーズを満たすだけでなく、それが将来の世代も彼らのニーズを満たす能力を損なわずに持続可能な開発を考えなければならない。この根拠に立脚して開発政策を見直していかなければならない。 39. 実質経済は細心の考慮を必要としている。マクロ経済の分析は、立案に関する限りにおいては十分ではない。下請け業者(・/FONT>maquila煤jと共に鉄鋼、鉱業、石油および自動車産業など、国家経済の部門別分析は不可欠である。同様に、中小規模産業は利用可能な労働力のほとんどを吸収している。これらの分析は開放経済の文脈において生産性政策の策定にとって必要不可欠である。例えば社会保障と保健システムの強化、再分配機能を有する貯蓄および年金、世界的な生産水準における相互関係の結果である国家と多国籍企業間の相互関係など、総意の意思決定がかかわるときには官民両部門間の密接な協力も同様に不可欠である。 40. 対外債務は、政策が変わりすでに進展がみられるために、もはや問題とは考えられていない。しかし、とりわけ相対的に小規模経済の場合、利払いは実質経済成長に当てる資源を排除する障害であることから、危機のいくつかの結果は未だ克服されずにいる。 41. 現在、短期的諸問題に特権的関心が寄せられており、長期的問題を預かっている。その結果、総意に基づく戦略計画、世論が聞きたい基本的疑問に答えることは必須条件となっている。 インターアクション・カウンシルのメンバー ミゲル・デラマドリ・ウルタード (元メキシコ大統領) ホセ・サルネイ (元ブラジル大統領) 専門家: ダヴィド・イバラ (メキシコ、CEPAL) サロモン・カルマノヴィッツ (コロンビア、バンコ・デラ・レプブリカ・オ・バンコ・エミソール) ノラ・ルスティグ (米州開発銀行) カルロス・モネタ (ヴェネズエラ、SELA) オズヴァルド・ロザレス (チリ、CEPAL) ヴィクトル・L・ウルキーディ (メキシコ大学) 加賀美 充洋 (アジア経済研究所) ロムロ・カバイェロス (メキシコ、CEPAL) セルヒオ・モタ (メキシコ、フォンド・デ・クルトゥーラ・エコノミカ、文化経済財団) ジャーナリスト: エリオ・ガスパリ (ブラジル、O・GLOBO) |
「ラテンアメリカの均衡と政治、経済、社会状況の展望」 1. ラテンアメリカにおける統治、民主主義および経済改革 1. ラテンアメリカにおける統治、民主主義および経済改革 |
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