. Communique of the Eighth Session in Seoul, Korea in Japanese

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インターアクション・カウンシル

第八回総会の最終声明 

1990年5月23-26日 

韓国・ソウル

I  アジアにおける政治的進展
II 欧州の変革と他地域への影響
III  金融市場のグローバル化と内在する危険性
IV   環境、人口、開発



 過去12カ月の間に、世界は予想だにしえなかった激しい変化を経験した。東欧の民主化およびアフリカ、アジア、ラテン・アメリカにおける民主化への移行の加速化は、市場原理の容認を拡大し、我々を「一つの世界」に近づけた。

 こうした進展は歓迎されるものではあるが、この進展そのものには変動という明白なリスクがある。社会的、経済的な不安定さは文化的差異を浮きぼりにし、政治的愛国主義の引き金となり、宗教的原理主義を際立たせる。

 複雑に交錯する地球的レベルの挑戦への対策として、世界規模で手段を講じるというより、二国間ないし限定された地域間での解決が大勢を占めようとしている。これは、今日見られる進展における建設的変化への可能性を損なうかもしれない。我々は各国政府に対し、世界的相互依存の管理に有効なアプローチを創作するよう勧告する。



I アジアにおける政治的進展



1. しかし、変化の波は、人種・宗教・文化・イデオロギーそして経済の面で多様性を特徴とするアジアにはまだ達していない。東アジアでは、その優れた経済実績が政治的安定をもたらした。それとは対象的に、中央アジアでは実際に、また潜在的にも紛争が存在している。さらに、中東では最近の動きが緊張を高めており、紛争の危険性はまさに現実的なものである。我々は、中東における抑制力、交渉、人権の尊重を強く主張する。

2. イデオロギーの引き締めにもかかわらず、中国は経済改革を進める決意を固めているかに見える。我々は、この改革への過程は奨励されるべきであると確信する。

3. 世界第一の債権国として、日本が国際舞台で果たす役割はますます大きくなるだろう。国際政治や金融界における日本の国際的地位は、その経済力、財政力と責任、とりわけ開発援助への貢献度に応じたものでなくてはならない。

4. 分断国家である韓国・北朝鮮両政府に対し、今日世界で見られる激動の変化と同様に劇的かつ勇気ある政治的決断を望む声が高まっている。我々は分断の悲劇を憂慮し、平和的統一に向けての第一歩として、下記の措置を両政府に強く要請する。

  (1)     南北両政府の最高指導者は、前提条件なしに共通の諸問題を討議する
       ため早急に会談すること。

  (2)     両政府は、人道的観点から南北に分断された離散家族の自由な相互
       制約のない交信をただちに許可すること。

  (3)     両政府は、南北の相互信頼を高めるため、市民による南北間の往来を
       合法化すること。

5. アジア地域では、その多様性故に有意義な地域組織の早期出現には疑問が残る。それよりも善隣政策を奨励すべきであり、水平分業の増大を通して地域内の貿易を強化すべきである。

6. すでに欧州に軍縮をもたらした、核・通常兵器双方の一層の削減を目的とした軍縮交渉も、太平洋地域に関しては進展が見られない。

7. 従って、我々は米ソに対し、太平洋とインド洋における軍縮、とりわけ空海軍の軍縮に向けての交渉を開始するよう勧告する。こうした議論は、同地域内の他の大国の関心と見解についても配慮されるべきである。

8. 同地域内に関するすべての政府は、紛争や諸問題への対処と、アジア・太平洋における安全保障の強化を目的とした交渉メカニズムを確立すべきであり、それも米ソ対話から始められるべきである。


II 欧州の変革と他地域への影響




9. 過去12カ月間の東欧における驚くべき展開は、欧州のみならず、世界全体に重要な問を投げかけている。

10. 我々は、国民が一つの国家の下で生き、共通の将来を決定するという東西両ドイツ国民の長年の願望がついに実現されんとする現実を、暖かく歓迎する。ドイツ国民の今の課題は、近隣諸国の利益にも合致することを保障する形で統一を成し遂げることである。

11. 統一ドイツが、国際法の下で平等の権利を与えられる国家として国際社会の容認を受けるに適したメカニズムとは、いわゆる2+4のプロセス(西独、東独、英国、米国、フランス、ソ連)の他に、適時にポーランドが参加するものであるべきだと我々は確信している。このプロセスを進める上で、欧州の安定を確保する必要性の他に国内統一の力学をも考慮しなければならない。統一ドイツがEC内に統合されることは、我々の了解するところであり、これは他の欧州諸国の利益にも合致する。

12. 我々は、欧州共同体(EC)の一層の政治的・経済的統合の必要性を認めるものの、現行の欧州自由貿易連盟(EFTA)加盟国との交渉に配慮し、いずれその他の欧州諸国(EFTA、COMECON加盟国、ないし非加盟国)が、ECとの関係を持ちうる方途を模索するよう勧告する。

13. 我々は、欧州大陸全体の経済統合と政治的組織化が真剣に考慮されるよう提言する。

14. これに関して、ヨーロッパ会議への参加を申請し、参加条件を満たし、かつ条約を批准した東欧諸国に対する加盟承認は、より包括的な欧州統合への重要なステップである。

15. 欧州の安定をはかるには、中央ヨーロッパ各国の軍事力削減と同時に、同地域における外国軍隊の削減も必要であると我々は確信する。これに関して我々は、欧州通常兵力に関するウィーン交渉の早期妥結および一層低い水準への兵力削減を要請する。


16. ヨーロッパ安全保障協力会議(CSCE)のプロセスは、最近の東欧諸国における進展に決定的役割を果たし、一層の欧州協力体制に有用な枠組をもたらしている。そのヴィジョンをもって今日我々が目撃している変化への道を切り開いたヘルシンキ条約の署名者に対し、我々はこの機会を利用して敬意を表したい。

17. 我々は、東欧諸国における民主化への変革を心から歓迎はするものの、欧州統一とヨーロッパの安全保障に対して障害となりうる排他的愛国主義、人種差別、復讐的傾向等の復活の兆しを憂慮している。

18. 究極的には、東欧の政治安定は経済改革に大いに依存している。我々は、民主化の成否は各国経済の構造改革に対する努力にかかっていると信じている。しかし、戦後のマーシャルプランに匹敵する西側からの多額の資金、それも主として譲与的条件での流入が強く望まれる。

19. このプロセスにおける第一歩として、ポーランド、ハンガリー、さらには民主化と経済改革の自由化に取り組み始めた東欧諸国すべての対外債務負担を軽減すべきである。

20. 我々は、経済の自由化を目指した東欧の動きは歓迎するものの、市場経済には効率と平等の組み合わせが絶対必要条件であると考えている。所得格差が恒久的な社会的不公平に繋がらず、経済変化をもたらしかねない失業が長期的現象とならないよう、各国政府は積極的な役割を果たさねばならない。


III 金融市場のグローバル化と内在する危険性



21. 開発途上国のニーズと相まった東欧の経済的ニーズにより、明らかに米国の双子の赤字が今後も国外資金に依存せざるをえないことは、世界経済にとって極めて望ましからぬ状態である。世界の資本を形成し、貯蓄を増大する差し迫った必要性がある。米国はその財政を正し、財政赤字を国内で賄い、1990年代の半ばまでには純資本輸出国に転換すべきである。同時に、ドイツ連邦共和国と日本の経常黒字は、開発途上国および東欧のニーズを緩和するために方向づけられるべきである。

22. 我々は、「開発途上国への資金フローに関する独立グループによる報告書」と、それに対し多くの国々の指導者から与えられた賛意に留意する。我々は、同報告書が各国政府と国際機関に広く配布されることを望み、国連による考慮を要請する。ヒューストン・サミットにおいて参加諸国の指導者はその提言を実行することに合意すべきである。

23. 我々は、今後の開発政策を検討するために、英連邦が1990年6月1日から3日までマレーシアのクアラルンプールにおいて首脳会議を開催するという決定を歓迎する。

24. 我々は、開発途上国への政府開発援助(ODA)をその他の地域に振り向ける意向はないという先進工業国指導者達の宣言の重要性を強調する。しかし、我々は民間投資の開発途上国から東欧への顕著な方向転換を深く懸念し、先進工業国ならびに国際金融機関に対し南への投資を有利にする制度を開発するよう要請する。

25. コメコン諸国の世界経済への統合を促進する手段として、これら諸国を国際通貨基金(IMF)、世界銀行、ガットの加盟国として受け入れるべきである。さらに、これら諸国ならびに他の特定の国々、とりわけ韓国はOECDにおいて特別な地位を供与されるべきである。韓国は援助供与国となるよう奨励されるべきである。

26. ガット・ウルグアイ・ラウンドは現在最終段階に近づいている。成功裡に完結すれば、国際貿易ならびに国境を越えた投資を強化せしめるだろうし、失敗に終われば保護主義の引き金となりかねない。故に、我々は交渉当事者に対し、とりわけ開発途上国の利益を十分に勘案した全般的合意を要請する。

27. 我々は、いくつかの重要な事例において、金融市場の規制緩和が慎重さを欠く金融行動に対する法規上の制約を崩してきているという懸念と、意を同じくする。従って我々は、規制当局による組織的リスクを軽減するための、あらゆる可能性の探求が不可欠であると確信する。その他の手段として、貸し手に対するより厳格な資本手当と、決済過程における改善が急務である。独立し、自立した中央銀行の役割はますます重要になることから、このことを法的、政治的規定に反映させなければならない。

28. 我々は、欧州の共通通貨、すなわち欧州通貨単位(ECU)の急速な発展とその使用に適した欧州中央銀行制度の確立が、通貨変動の安定化に向け重要なステップを踏むことになろうと確信している。長期的には、ドル、円および参加を望む他の諸国に広く開かれたECUとの安定的為替相場制度が創設されるべきである。このような制度の確立には、金融・財政政策の協調をより緊密化させることが必至である。



IV 環境、人口、開発



29. 生態学上の問題は、1990年代以降の政治に大きな挑戦を挑むであろう。開発途上国、先進工業国、企業および個人は、等しく持続可能な経済活動と開発、さらには天然資源の利用を追求しなければならない。

30. 我々は、ミゲル・デラマドリ・ウルタド氏が提唱した「生態環境と世界経済」に関する、ハイレベル専門家グループによる報告書の提言を支持する。(注)

 適切な経済手段が適用されれば、経済成長と環境保護は両立しうる。しかし環境問題に対する広範な改善策の採用が急務となっている。価格、税金、貸借の許可、課税と料金、所有権、情報公開の市場メカニズムおよび関連した経済手段は、警告と動機付けの双方をもたらす。多くの経験によれば、市場メカニズムは、亜硫黄酸ガスの放出制限や自動車のガソリン使用基準のように、時として行政上の目標値によって補完される必要がある。我々は、汚染者に支払い義務があるという原則が、国内的にも国際的にも政策の原点であるべきだと提言する。これは、貿易のひずみを回避することにもつながろう。


(注)ミゲル・デラマドリ・ウルタド氏に加えて下記の諸氏が参加した。
    Maria de Lourdes Pintasilgo (ポルトガル)、  Ola Ullsten (スウェーデン)、  Emile van Lennep (オランダ)、

   Bohdan Lewandow-ski (ポーランド)、   Richard E. Benedick (米国)、   JulioCarrizosa Umana (コロンビア)、
    Harris Gleckman (米国)、 Guennady Golubev (ソ連)、   Michael Grubb (英国)、 石弘之 (日本)、            
    Mansur Khalid (スーダン)、   Horacio Lombardo (メキシコ)、 Mao Yu-shi (中国)、   

  Attiq Rahman (バングラデシュ)、  Robert Repetto (米国)、    Richard Richels (米国)、 
    S. Noble Robinson (米国)、  Gabriele Scimei (イタリア)、     Horst Siebert (西独)、
    Harmen Vebruggenn (オランダ) 、   Ernst-Ulrich von Weizsaecker (西独)、
  James Winpenny (米国)、
     George M. Woodwell (米国)



31. 我々は、規制力を伴った国際的に拘束力のある政策の枠組みを設けるために会議権威の確立を求めた1988年4月のハーグ合意の早期実現を強く要請する。


32. 排気ガスの削減に拘束力のある合意の採択を目的とした、地球環境問題に関する会議も招請されるべきであろう。我々は汚染源である諸国に対し、排気ガスの合意目標を自発的に守る加盟国からなる気候保護クラブの加入を要請する。さらに我々は、研究開発計画や環境面に有益な技術の移転を含めた、環境計画の開発・実施に対する支援を目的とする追加資金の供与制度の創設を要請する。

33. 我々は各国政府に対し、下記の措置を呼びかける。

 ◇     経済、社会の統計システムの改訂を通して、経済の発展をより適切に測定する。

 ◇     環境破壊と公害コストを、政府・企業・個人の意志決定過程に取り入れる政策を
    採択する。

 ◇     漸進的に低い排気ガスと公害の目標数値を設定し、実施する。


34. エネルギー政策は、地球の温暖化を阻止する鍵である。我々が1989年に提言した三段階の軽減戦略は、今日でも妥当である。

 ◇     短期的戦略として、エネルギー効率と保全の改善。

 ◇     中期的には、石炭から石油、さらにガスへのエネルギー資源ミックスの転換。

 ◇     長期的には、再生可能なエネルギー源、とりわけ原子力、太陽熱、地熱の経済的
    利用を促進する大規模な研究開発プログラム。このようなプログラムは政府支出で
    賄われ、科学者や専門的研究機関によって実行に移されるべきである。

35. 我々は、国際原子力機構(IAEA)による調整を通じて、安全かつ安定的核廃棄物処理と原子炉の分解問題の解決策を見いだす努力を強化することを呼びかける。

36. 我々は、先進工業国による工業化と消費の形態における早期調整を要請する。低開発、貧困および人口増加もまた環境悪化の主要因である。我々は、世界人口を80億人から100億人で安定させる政策採択の最重要性を再度訴える。この目的達成のために、我々はすべての開発途上国に対し、長期的人口計画の設定を要求する。家族計画と共に避妊教育を徹底する国際人口援助計画に対する資金は、倍増されるべきである。

37. アフリカは危機の大陸である。人口の増加は、経済的、社会的発展より速く、食糧の輸入も増大の一途にある。1人当たりのGNPは下降している。人口の70%は土地に依存する生活形態を取っているが、人口急増の圧力によって土地の生産能力は低下しつつある。我々は、アフリカ大陸単独ではこの危機を解決しえないという事実に注意を喚起したい。

38. 人口の爆発的な増加率、自然環境の破壊および人的・制度的インフラストラクチャーの欠如という三つの基本的な問題を短期的に解決する手段はない。これらの問題に取り組むための行動は、先ずアフリカを出発点としなければならない。アフリカおよび国際社会は、アフリカを守るための地球連合を発足させ、同大陸の限界的生存を改善するために共同で努力を払うべきである。

39. 最も富裕な24カ国による、東欧に新たに出現した民主主義と市場経済に対する支援活動は、世界の他の地域における活動のモデルとなりうるが、各地域の状況に沿ったものであることが前提条件である。中米およびカリブ海は、すでにこの種の活動の対象地域と考えられている。その他の地域、とりわけアフリカは確実にこのような援助活動を受ける資格を有する。


ソウル会議出席者

1.    インターアクション・カウンシル メンバー

ヘルムート・シュミット   (西ドイツ前首相) 議長
福田 赳夫       (日本元首相)   名誉議長
マリア・デローデス・ピンタゴシルゴ   (ポルトガル元首相)副議長
アンドリース・ファンアフト (オランダ元首相)
カメル・ハッサン・アリ (エジプト元首相)
キルティ・ニディ・ビスタ     (ネパール元首相)
ミゲル・デラマドリ・ウルタド (メキシコ元大統領)
イエノ・フォック (ハンガリー元首相)
マルコム・フレーザー     (オーストラリア元首相)
クルト・ファーグラー (スイス前大統領)
ヴァレリー・ジスカール・デスタン (フランス元大統領)
ダニエル・リスロ (ザンビア元首相)
オルセグン・オバサンジョ          (ナイジェリア元大統領)
ミサエル・パストラナ・ボレロ   (コロンビア元大統領)
ミチャ・リビチッチ             (ユーゴスラビア元首相)
申 金玄石高         (韓国元首相)
ピエール・エリオット・トルドー         (カナダ元首相)
マヌエル・ウヨア   (ペルー元首相)
オラ・ウルステン      (スウェーデン元首相)
   
2.    特別ゲスト
 
アナトリー・F・ドブリーニン   (ソ連元外相)
ミルトン・W・ハドソン   (銀行家:米国)
ウイリアム・P・ロックリン (企業家:米国)
エミール・ファンレネップ         (元OECD事務局長:オランダ)
宮崎 勇          (大和総研理事長:日本)
I.G・パテル     (ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス学長:インド)
タンスリ・ガザリ・シャフィ    (マレーシア元外相)
ロバート・S・マクナマラ       (米国元国防長官)
プー・シャン              (中国社会科学研究所所長)
ヤン・ウルバン (ジャーナリスト:チェコスロバキア)

     

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