. Communique of the Sixth Session in Moscow, USSR in Japanese

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インターアクション・カウンシル

第六回総会の最終声明 

1988年5月17−19日 

モスクワ、ソビエト社会主義共和国連邦

    21世紀への準備
I   環境に対する脅威
II  1990年代の世界経済
III 1990年代における世界の戦略的展望



21世紀への準備



1. 今世紀初頭の世界人口は、15〜20億人であった。今日からほんの11年後の1999年には60億人にも達するといわれ、食糧、保健衛生、住居、エネルギー、教育および雇用機会に対する需要がそれと共に増大する。今日よりも公平で安定した世界を築くために、今こそ90年代に何をすべきかを検討する時である。

2. 90年代を迎える人類は、近代最悪の疫病に侵されている。エイズは人命を脅かすのみならず、数世紀にわたって培われてきた国際関係の根底を覆しかねない。その他の保健衛生の分野は、国際的支援によって進展してきている。我々は特に世界幼児免疫計画の支援強化を推奨し、各国政府に対し世界中の幼児を疫病から守る努力の継続と拡大を訴える。

3. 人類の幸福、経済成長、健康の追求および我々が物理的にも社会的にも適応しているこの自然界の生存は、複合的な生態学的諸問題の解決に依存している。なかでも、破壊的な気候の変化をもたらすエネルギー供給と世界的な森林破壊問題を解決することの優先度は高い。

4. これらの問題は戦略的な性質を帯びており、国境を超えた措置が必要である。一国家が、他から独立して個別に解決しうる問題ではない。今後は、全人類が相互に依存し合って生きて行かねばならない。故に、21世紀を迎えるにあたり、90年代を多国間主義と国際的解決の10年としなければならない。



I 環境に対する脅威



5. 1988年1月にリスボンで開催されたインタ−アクション・カウンシルの「地球の森林破壊問題」に関する専門家会議で明らかにされたように、無差別な森林伐採とそれが環境と気候に及ぼす影響は、21世紀における主要問題の一つとなると我々は確信している。増大の一途を辿る大量の炭化水素の燃焼と地球の森林破壊の相乗作用がいわゆる「温室効果」と呼ばれる気象の変化をもたらしていることは、今日すでに科学的に確認された事実である。各国政府は、化石燃料や原子力燃料を含むすべてのエネルギー供給源に対してリスク評価を行い、化石燃料の使用増大は望ましいことではないと認識すべきである。

6. 我々は、原子力発電所の現在の操作安全度を査定し、原子力廃棄物の現状を審査する視点から、国連事務総長がこの問題を次期総会の議題に取りあげることを要請する。さらに、我々は環境問題に対し認識を深め、その解決策を見いだすためのすべての地域的努力を支援する。



II 1990年代の世界経済



7. 1980年代は、債権・債務国間と同様に先進工業国の間でも劇的な不均衡を呈して終わるだろう。事実、インターアクション・カウンシルが創設された1983年以降、米国は世界最大の債権国から世界最大の純債務国に転落した。その間、開発途上国の累積債務額は1兆2千億ドルに倍増した。従って、第三世界の大半の債務国にとって債務負担は耐えられない規模になっている。

8. 我々は1984年以来、分担という原則に基づいて第三世界に対する債務問題の抜本的解決を提案し続けてきた。これ以上解決を延期することは、世界の金融関係を破壊し、開発途上国の社会や政府の緊張、悲惨さ、不安定さを高め、その他の関係諸国にも悪影響を及ぼすだろうと我々は確信している。従って、低所得国経済の再編成に具体的に協力することが、今後の改善の基盤となるかもしれない。

9. 他方、米国の債務問題を未解決のまま放置することは、新たなインフレと経済崩壊のリスクを増大してしまう。従って、我々は貿易および金融政策の調整が急務であることを強調する。これらの調整過程には、経済成長が前提条件となる。

10. 我々は、国際貿易を均衡させるための調整の規模の大きさを深く憂慮している。世界貿易はますます保護主義によって歪められている。必要とされる調整過程を円滑に進めるには、債務問題に対処する国際収支の政策と戦略が肝要となる。従って、保護主義の撤廃に向けて、今年中に現在進行中のガット・ウルグアイ・ラウンドについて徹底的な調査が必要であることを強調したい。

11. 米国、ECおよび日本は、コストが高く破滅的な農業保護政策を採用している。1992年からの欧州域内自由市場が、新たな保護主義的行為を誘発するのではないかと広く懸念されている。新しい経済共同体は、世界経済に積極的に貢献する可能性があるが、この可能性の実現には自由貿易政策の追求が不可欠である。

12. 我々は、1990年代に新たな不均衡が生じることを阻止するには、国際収支政策に基準を設ける必要があると確信する。そうした基準は、過度な赤字や黒字の回避を可能にする規則を設定し、富める国がその貯蓄の一部を開発途上国に還流するというコミットメントをとりつけるべきである。とりわけ最大の債権国である日本は、政府開発援助(ODA)を劇的に増額すべきである。我々は、これらの基準を設定するにあたり、IMFも積極的に貢献すべき国際的な対話を要請する。

13. 新しい国際通貨取決には、経済運営に自立を求めるよう有効な機能を行使する権限が与えられるべきであり、そうした取り決めは国際通貨市場の参加国すべてに等しく適用されるべきである。

14. 我々は、通貨・貿易問題が2国間取り決めによって解決される傾向にあることおよびそれに不可欠な多国間の枠組みが弱体化していることを深く憂慮する。政治指導者達は、有意義な解決には多国間アプローチが不可欠であることを理解しているのだろうか。

15. 我々は、米ドルの他に準備通貨を持つことが、国際的不均衡問題の改善を多いに円滑にすると確信する。我々は、長期的には地球規模の経済成長の波乱に対処する通貨が一つ以上必要であると考えている。日本の政策決定者はこの挑戦に応じる用意があるだろうか。欧州共同体の指導者達は、世界の準備通貨となりうるように欧州通貨単位(ECU)を発展させていく必要性を認識しているだろうか。

16. この20年間は、深刻な経済不均衡のみならず、一連の巨大な経済ショックで特徴づけられてきた。すなわち、70年代の二度にわたる石油価格の高騰および世界規模の金融・株式市場の明らかな脆弱さである。開発途上国ばかりでなく先進工業国も、これらのショックに満足しうる対応をしてこなかった。

17. 第三世界の指導者達は、経済と金融の規律ある運営こそが、援助増額と信用獲得のための前提条件であることを認識すべきである。すなわち、資源の乱用や不必要な軍事費の支出を防止することで、発展的かつ自由な経済政策の責任を分担しなければならない。

18. 1990年代は、技術、市場競争およびエネルギーの分野における持続的かつ急激な変化によって特徴づけられると予想される。各国の政治指導者達には、国内経済に柔軟性をもたらし、市場の硬直性を撤廃するために必要な行動をとる決意があるのだろうか。また、社会と経済のニーズのはざまで、そして公正さと効率性とのはざまで、新たな均衡を模索する用意があるのだろうか。

19. 1990年代は、各国相互依存がさらに増すであろう。これは、主要経済国におけるマクロ経済政策のより良き調整ならびに安定した経済環境を創り出すための国際的な共同行動を要請する。この過程では、既得権益を持つ多くの人々の抵抗にあうであろう。しかしながら、人類の長期的な利益のために、勇気ある指導力が発揮されることを要望する。



III 1990年代における世界の戦略的展望


20. 我々は、米ソ首脳会議の再会に対する慎重な楽観主義に同調する。我々が、1983年以降主張してきた中距離核兵器協定は、初めてその種の兵器を全面廃止する核兵器削減の建設的な第一歩として歓迎したい。

21. 米ソの両首脳はこれを基盤に新しい関係を構築し、国際関係における脱イデオロギー化をはかり、両国経済が直面している経済困難に対応すべきである。これからの10年間は、より低いレベルの軍備力で安全保障を達成するため、想像力、指導力そして政治的判断力が必要とされる。

22. 米ソ両国には非核拡散条約(NPT条約)を完全に発行させ、これを厳格に遵守する特別な責任がある。潜在的核保有国の増加は、地域的核紛争の可能性を高めている。このような怖るべき脅威をいかにして減少させるかという議論は始められるのだろうか。

23. 米ソ間のABM条約は、波乱要因である宇宙での軍拡競争を阻止する中核である。我々は、両国がABM条約を遵守するよう再度強く要請する。両国は同条約の解釈と発行について、また「攻撃的」及び「防衛的」姿勢について問題を速やかに解決し、同条約を強化していかなければならない。

24. 核兵器の存在自体が、核保有国とその同盟諸国に慎重さを強制してきた。戦略的防衛分野における進展ならびに新たな軍事ドクトリンの出現は、一層の明確さを要求している。軍事ドクトリンに関する交渉は、戦略的意図に関する相互理解を深め、ひいては紛争の可能性を減少させるだろう。我々は、関係諸国が初期段階の討議を展開していくように要請する。

25. 米ソ両国による戦略兵器の50%削減の見通しは、一連の戦略兵器削減に向けての予備作業のきっかけとなるだろう。その際に、欧州戦略軍事力が果たす役割は何だろうか。両国がその後どの程度保有核を削減すれば、すべての核保有国、なかでも中国、英国及びにフランスに、既存の核兵力削減を目的とした多国間会議への参加を促すことができるだろうか。両国の核兵器を象徴的なレベルまで削減できる日は来るのだろうか。

26. 欧州における通常軍事力削減の努力は、兵器の移動配備撤回と破棄ならびに部隊削減の両面での対称性を要請するだろう。それによって、軍事力を現行より低い水準で均衡させることができる。

27. 少なくとも16カ国が現在、化学兵器を保有している。これらの国々は、化学兵器の包括的禁止に同意し、またそれらの近代化を放棄することに優先的に取り組むだろうか。

28. ソ連が実施しているペレストロイカおよびグラスノスチ政策は、同国の経済、政治および軍事的コミットメントに新たな均衡をもたらしうる。これらの政策は、90年代がもたらす挑戦を受けて立つにあたって、西側諸国と協力するという新たな戦略アプローチを意味しているのだろうか。イデオロギーの違いについては、あまりこだわらないのだろうか。ゴルバチョフ書記長が提唱する、欧州および太平洋地域における「共通の家」という概念は何を意味するのだろうか。

29. 中国および日本を含むアジア・太平洋地域は、今世紀末には世界のGNPの50%を占めると予測されている。日本は、その強い経済力によって政治的、戦略的な影響力を増大させることになるだろう。

30. 我々は、日本に対し軍事支出を増やすよう圧力をかけることは賢明ではないと考える。日本は、その絶対額で、世界の大国の関心事である戦略的均衡にとって未知の意味合いを持つ、世界最大の軍事支出国の一つである。

31. あらゆる地域に向けた武器供給の競争が、多くの地域での状況をますます不安定なものにしている。開発途上国が開発に不可欠な資源を枯渇させてしまう武器供給に関する合意に達するために、新たな努力はできないだろうか。

32. 今後の東西関係は、軍事力抑制のみに依存すべきではない。対話や交渉は政策安定に基づくべきであり、それも指導者の交替に余り左右されてはならない。アフガニスタンに関する協定は歓迎すべき第一歩であり、両超大国間の当面の関係を越えた建設的な影響を与えている。米国は、アフガニスタンの反政府勢力への武器供給を自制する用意があるだろうか。

33. 我々は、イラン・イラク戦争、中近東、南アフリカ、中央アフリカ、中米および東南アジアにおける地域紛争に平和的な解決をもたらすための、米ソ両首脳の協力と努力を強く求める。

 ◇    カンボジアからの外国軍の早期撤退を求める。

 ◇     スーダンの紛争当事者に影響力を持つ国々の指導者達は、協力して軍事的
    対立を解消する用意があるのだろうか。

 ◇     先進工業国の指導者達は、アパルトヘイト体制の世界的否認の証として
    南アフリカ共和国に経済制裁を課し、人権闘争に対する支援を表明する
    用意はあるのだろうか。我々は、アパルトヘイト後の人種平等な南アフリカの
    展望について、国際社会が取り組み始めなければならないと考える。

 ◇     先進工業国は、いつまでも南アフリカがなんら制裁を受けることなく近隣
    諸国に経済・軍事的不安定をもたらすことを許すのだろうか。
    不安定な状況におかれている国々を強化するように、西側諸国は人道的、
    経済的、平和的な援助を大幅に増やす準備があるのだろうか。これに関連
    して、先進工業国は大規模な多国間援助計画の資金調達にただちに参加する
    用意があるのだろうか。

34. 10年前、国連安全保障理事会は、ナミビア独立へのプロセスを規定した決議案第435号を採択した。同決議の早期完全実施のため、西側諸国は安全保障理事会の他の加盟国と共に、どのような措置をとる用意があるのだろうか。

35. 我々はいかなるテロ行為も非難する。罪のない人々を人質にするテロリズムへの制裁の方法について諸国間に見解の相違が生じたことは遺憾である。それぞれの経験に照らして、いかにテロ行為に対処し、防止するかについて新たな合意に達するために、各国政府間で話し合いが持てないものだろうか。

36. 国際関係、とりわけ米ソ間に新しい流れが出てきた今こそ、来るべき90年代における国連の役割を再検討し、加盟国すべての参加によって国連を今までより有意義な組織にしていく好期である。全世界の、とりわけ常任安保理事国の指導者達は、国連を多くの問題や紛争解決に役立て、新たなスタートを切るために努力する用意があるのだろうか。
   

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