. Communique of the 15th Session in Noordwijk, The Netherlands in Japanese

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インターアクション・カウンシル


第15回総会の最終声明



1997年6月1日〜4日


オランダ、ノルドワイク









世界の現状

1.世界は現在大きな変化の時期を迎えており、その中にあって正義を促進し、文化の多様性を尊重し、それらが提供しうる潜在的福利を最大限に拡大する責任をわれわれが果たすためには、創造的かつ啓発的なリーダーシップが必要とされる。

2.明日の世界は、多様な文化や宗教間のますます高まる相互作用に特徴づけられるだろう。平和裡の開発には、こうした変化する世界の精神的側面を受け入れ、文化と宗教の多様性を貴び尊敬することを人間的に豊かになる経験として学び、調和を促進することが不可欠である。

3.ユーロ大西洋地域外の経済における諸経済の政治的・経済的重要性の増大に鑑み、カウンシルはロシアおよび中国のG−7への完全参加と、WTOへの加盟を直ちに承認するよう勧告する。さらに、他の主要諸国も、世界経済に及ぼすそれぞれの影響力の拡大に伴い、これらの機関に段階的に参加させるべきである。

4.軍備の管理と削減は引き続き第一義的な関心事項である。生物兵器禁止国際条約の締結と核非拡散条約の強化は、通常兵器条約の採択とともにきわめて重要である。これに関連して、地域的な力の均衡を不安定にすることからも、先進主要国は先端兵器の開発途上諸国への販売を削減すべきである。年間国家予算における軍事支出は削減されなければならない。

5.NATOへの新規加盟国の承認後、西側世界は対ロシア関係におけるさらなる緊張の回避をはかるべきである。

グローバリゼーションのリスクと機会

6.グローバリゼーションは、非行動の口実に使うのではなく、活用されるべき挑戦と受け止めるべきである。グローバリゼーションは伝統的な経済活動水準をさらに高め、技術、生産、金融、投資、情報を国際的に普及させることを表している。情報技術の劇的な進歩は、生産の世界的分散および国際的な資本の流れの強化に大きな影響を与えてきた。

7.開放された世界経済は、これまで伝統的に除外されてきた地域からも新たに参加者を組み込む形で拡大してきた。しかしカウンシルは、特定の地域、とりわけサハラ以南のアフリカが除外されつつあることに注意を喚起したい。不十分な教育、蔓延する疾病問題、過剰な人口成長およびその結果としての低い福祉水準が開発に必要な海外投資の誘致を妨げている。国際機関は、効率的な政府、法制改革、金融改革、資本市場の開発、貿易の自由化等を育成することによってこのような投資のための環境を創設する重要な役割を担っている。

8.カウンシルは、世界銀行が現在、急速な成長率を開発途上世界における優先目標として強調していることを歓迎する。しかし、成長だけでは不十分であることも認識している。カウンシルは貧困を緩和し、家族計画を促進し、とりわけ女性を対象とする教育水準を改善する必要を強調する。この目標に向けて、軍事支出の削減による予算の再配分が重要である。また、経済・社会開発の促進手段として政府開発援助(ODA)を維持することも重要である。

9.リオ・サミットから5年、いくつかの進展もみられるものの、一般的趨勢は人類を取り巻く環境の劣化を示唆している。われわれは各国政府にリオ会議の公約を守るよう勧告する。生産過程を環境的な要請に見合うよう調整する上で民間企業の役割と責任がさらに強調されるべきである。

10.現在の交易条件は多くの開発途上諸国、とりわけサハラ以南のアフリカ諸国にとって不公平である。このような諸国には国際貿易システムから事実上除外されてしまう深刻な危険がある。特にこうした諸国では農業従事者の人口に占める割合が高いという事実に鑑み、カウンシルは先進諸国に対し、自国の農業部門に供与している補助金を段階的に廃止するよう勧告する。そのような補助金と貿易障壁は開発途上諸国の経済を損なうだけでなく、先進諸国経済内にも深刻なゆがみをもたらす。

11.低賃金諸国との競争が、先進工業諸国における国内問題のスケープゴートとして利用されてはならない。保護貿易主義はこうした問題の解決策にはならない。生産性の水準を上げることのみが、先進諸国経済の競争力を回復させるのである。従って、労働市場をより弾力的にしなければならず、教育と職業訓練能力も改善されなければならない。各国政府は、調整期間中の失業者に対する救済策および彼らが労働市場に再び参入できるよう再訓練の機会を提供しなければならない。より一般的には、これらの措置は社会的正義とコンセンサスの育成を基盤とする産業デモクラシーの新しいモデル形成というより広範な文脈に捉えなおされるべきである。

12.金融市場はグローバリゼーションによって一変された。国家当局にとって自国経済の金融諸条件を管理することはますます困難になっている。今日の国際的資金の流れの規模、投機的行動の及ぼす影響、そしてこのような動きが影響力を持ち、世界中に波及する速度は重大な混乱を引き起こす危険をはらんでいる。主要経済諸国間の協調が強化されない限り、大規模な投機的資本の流動は不可避であり、そのマイナス効果もすべて伴って現れるだろう。

13.マーストリヒト条約が打ち出した単一欧州通貨は、米国、日本、欧州連合国、これら三つの主要通貨ブロック間が政策協調をすれば、より安定した均衡をもたらすだろう。カウンシルは、為替レートのターゲットゾーンの活用に伴う困難を認識した上で、それを探ることを再度提言する。

14.金融デリバティブ取引の増大も、もう一つの懸念領域である。こうした商品はトレーダーや投資家が国際金融市場におけるリスクを回避する上で有効な役割を果たすが、それらが不適切に使用された場合は、負担しきれない損失を当事者にもたらしうる。ノンバンク金融機関、とりわけデリバティブ市場での取引の多い機関は、慎重な監視の対象にされるべきである。その他の即刻注意すべき領域は、ノンバンクはどこまでデリバティブ取引を許されるべきか、大幅な利ざやに対する法的ないし公的規制、および店頭取引の規制である。さらに、中央銀行はあらゆる銀行・金融機関のリスク管理手続きを監督する役割を強化・調整しなければならない。

人間の責任に関する宣言に向けて

15.グローバリゼーションによって一変した世界において、共に暮らす規範としての共通の倫理基準が、個人のみならず企業や政府当局の行動にも不可欠となった。

16.50年近く前の第二次世界大戦後、二つの敗戦独裁国の遺産として、国連総会は全体主義の迫害から個人を守るために「世界人権宣言」を採択した。半世紀を経過した現在でも、同宣言はいまだに世界の多くの地域で遵守されていない。その完全なる実行は国際社会にとり大きな挑戦である。

17.グローバリゼーションがもたらした挑戦は、1948年当時の努力に匹敵するものを必要とする。それは、「人間の責任に関する世界宣言」を作成し採択することである。

18.過去10年余、インターアクション・カウンシルは共通の原則と共有の倫理基準を策定するために、あらゆる主要宗教と哲学の代表者を政治指導者と共に招請し、専門家会議を開催してきた。そして現在カウンシルは、「人間の責任に関する世界宣言」を起草するための広範囲に及ぶプロセスに着手する準備をしている。カウンシルは慎重な考慮の後、議論の基盤となる暫定草案を提出し、関心あるすべての関係者からその見解および意見を招請する。そしてカウンシルは改訂された草案を近々各国政府に提出する意向である。

19.この過程は、その期待される結果とともに、相互理解と共有価値の認識を基盤とする積極的寛容性の促進に貢献し、それによって差し迫った文明の衝突という脅威が回避されうることを証明するだろう。






インターアクション・カウンシル第15回総会
 

出席者 

メンバー

ヘルムート・シュミット名誉議長、西独前首相

アンドリース・ファンアフト議長、オランダ元首相

オスカル・アリアス・サンチェス、コスタリカ元大統領

キャラハン卿、英国元首

ジミー・カーター、米国元大統領

ミゲル・デラマドリ・ウルダト、メキシコ元大統領

マルコム・フレーザー、オーストラリア元首相

クルト・ファーグラー、スイス前大統領

フェリペ・ゴンザレス・マルケズ、スペイン前首相

ケネス・カウンダ、ザンビア前大統領

宮沢喜一、日本元首相

マリア・デ・ローデス・ピンタシルゴ、ポルトガル元首相

ホセ・サルネイ、ブラジル元大統領

シン・ヒョン・ホワック、韓国元首相

カレヴィ・ソルサ、フィンランド元首相

ピエール・エリオット・トルドー、カナダ元首相

オラ・ウルステン、スウェーデン元首相

ヨルゴス・バシリウー、キプロス元大統領

特別ゲスト

トーマス・アックスウォーシイ、ハーバード大学

アジャイ・チバー博士、世界銀行

ハンス・キュング、チュービンゲン大学名誉教授

リー・セン・ユン博士、韓国元副首相

杉浦正健、衆議院議員

渡辺幸治、日本国前ロシア大使

呉学謙、中国前副首相

アレグサンダー・ヤコブレフ、旧ソ連元大統領アドバイザー

事務総長

宮崎勇、日本元経済企画庁長官

 

組織委員長

ヤープ・ロスト・オネス

招待ジャーナリスト

フローラ・ルイス、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン

クシュロウ・イラーニ、ステーツマン(インド)

早房長治、朝日新聞

 

報告書担当者

ベン・クナペン

F.A.M. アルティン・フォン・ゲウサウ教授

ヘンク・ド・ハーン教授

イェンス・フィッシャー、元シュミット首相アドバイザー






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