. Communique of the 12th Session in Dresden, Germany   in Japanese

mokuji.jpg (1569 バイト)

 

インターアクション・カウンシル

第12回総会の最終声明 

1994年6月7−10日 

ドレスデン、ドイツ

1. インターアクション・カウンシルは1983年の発足以来、三つの優先課題と取り組んできた。すなわち、a)平和と軍縮、b)人口・環境・資源・開発の地球規模の問題、c)世界経済の再活性化である。

 

2. 冷戦は終焉したものの、過去数十年におよぶ軍拡競争の結果、備蓄された核兵器は依然として存在している。われわれは、すべての核兵器廃止に向けての今日の機会を遅滞なく捉えるべきである。その第一歩として、包括的実験禁止条約が締結されるべきであり、すべての大量破壊兵器の拡散を抑制する厳格な措置がとられねばならない。

 

3. この文脈において、核不拡散条約(NPT)はとりわけ重要な役割を果たすものである。1995年に開始される見直しは、条約の長期的延長と国際原子力機構(IAEA)の強制査察の権限強化も含む体制強化をもたらすべきである。同時に5大核保有国は、NPTの遵守と大量な核兵器の削減に、義務感を抱くべきである。

4. 北朝鮮政府のNPT下の査察拒否は、地域的にも世界的にも不安定化の要因である。もし北朝鮮が国際社会の鮮明な意志を無視し続けるならば、制裁を適用しかつ実行すべきである。

 

5. 冷戦後の世界では、安全保障の概念が非軍事の次元をも包括するようになった。なかんずく最も重要な問題は、世界人口の劇的増大である。今世紀初めに16億人であった世界人口は、今世紀末には64億人に達すると推定されている。緊急に対処措置を採らないと、2020年には80億人、2050年には100億人という驚くべき数に達すると予測されている。このように急増する人口を、地球上の限られた資源とエネルギーでどうやって養うことができようか。食料問題はとりわけて重大である。国連食糧農業機関(FAO)は、人口と食糧の受給関係の展望についての権威ある研究を行うべきである。特に食糧安全保障の改善という見地から受給の問題に取り組むべきである。

 

6. 1994年9月にカイロで開催予定の人口と開発に関する国連会議は、確実な行動の合意に達することができる90年代唯一の機会である。同会議は、下記の措置を採択すべきである。

 

 ◇ 避妊具の活用と入手手段の拡大。

 ◇ 少女に対する義務教育期間の、望むべくは14才ないし16 才までの延長。

 ◇ 女性の権利、地位、雇用機会および資材・資金へのアクセス の強化。

 ◇ 特に婦人と児童に重点を置いた、診療所をはじめとする基本 的保健サービスの改善と拡大。7. 先進国は、より多額の資金を開発途上国に供与し、後者は提案された諸計画と措置の実施のために、国家優先事項と予算配分を再考慮すべきである。国際レベルでは、効果的な家族計画と開発援助を関係づけるというような優先措置が採択されるべきである。その他、「債務と教育のスワップ」や、提唱されている「世界非軍事化基金」も考えられよう。

 

8. 南アフリカとルワンダは、冷戦後の世界におけるジレンマの対極的なケースである。目標を適切に定めた国際的制裁に助けられて有望な民主化を進めている前者と、人間にふりかかる惨禍と無差別殺戮とを国際社会から完全に無視されている後者とは、鮮明な対照をなしている。

 

9. 国内的な部族紛争が、地域社会や国家の社会的構造を破壊し、地域全体を不安定にする連鎖反応を引き起こそうとしている。その安定は、大量殺戮または政府機能の明らかな崩壊に対して、国際社会が自己利益と虚偽の言い訳を隠れみのにせず介入することによって、初めて回復されよう。

 

10. 国連安全保障理事会は、中心的な役割を果たすべきである。今日まで主権国家の範疇とされていた地域への介入に関する基準を定義し直すべきである。

 

11. 国連憲章は国際軍隊の配備を想定しているが、この想定は国連の下での志願制の常備軍創設、あるいは各国による目的別兵力供与などにより強化されねばならない。運用上の詳細も早急に制定すべきである。

12. 無制限な武器貿易は、内線や地域紛争の火に油を注ぐ。大量殺戮兵器、弾道弾ミサイル、通常兵器の貿易に対する効力のある制御システム(武器輸出・輸入国双方に対する世界的な規範、規定、制限も含む)を確立しなければならない。開発途上国との武器貿易は、大幅に削減しなければならない。このため、他国からの侵略に対する自衛手段の場合を除き、GNPの2%以上を軍事に費やす国は開発援助および資金の受益資格を有さないものとすべきである。

 

13. 安全保障の概念には、伝統的な戦略的側面以外の危険が存在している。

 

14. 国際的に活動する犯罪組織および害毒の大きい麻薬取引などの新たな現象は、国際的な警察活動を正当化している。効果的な協力体制が緊急に考えられねばならない。

 

15. 金融市場においては、新商品の拡大と外為市場における投機的取引が、世界経済の安定を損なっている。我々は、強固な監督・規制制度を世界的に確立することの可能性と、そのために必要とされる実務措置を国際決済銀行(BIS)のもとで早急に研究するよう、再び呼びかける。

 

16. 冷戦後の世界は、国際諸機関の将来的役割の再検討を要求している。我々は、アンドリース・ファンアフト氏が議長を務めた専門家グループの報告を歓迎し、国際社会がその提言を考察し、適切な行動を探るよう勧める。

17. 我々は、拘束力のある新たな紛争解決システムを備えた世界貿易機構(WTO)を確立するマラケッシュ合意を、すべての国が早急に批准するよう勧告する。WTOは、保護主義、地域主義、単独主義と効果的に闘うメカニズムになれるよう、可能な限り早急な活動開始を許されるべきである。

 

18. ソ連邦と衛星諸国の消滅により、世界経済は同一の資本主義経済体制に変容したという人々もいる。しかし、現実には極めて多くの異なった市場システムが見られる。これらの経済は、いずれもある政治・経済システムやイデオロギーの廃棄よりもむしろ科学技術の急速な進展により、変化したようにみえる。すべての経済において変化にはコストが伴う。

 

19. 旧中央計画経済からの市場経済への移行は、経済構造と同じ程度に文化・政治構造にも条件付づけられている。全く異なった条件の下での成功例や純然たる学術理論の単純な強制は、自滅的な誤りである。すべての経済が新たな問題と挑戦に直面しているこの変革期にあっては、言動一致をもたらす謙虚さと努力がもっともふさわしく思われる。

 

20. 我々は、1991年プラハ総会で改革を望む国々に対し「急がば廻れ」と提言した。さらに規制緩和と市場経済への前進および民営化も漸進的に行われるべきであり、何よりも移行過程を円滑にするためにも可能な限りの社会的安全ネットを維持すべきであると提言した。

21. 旧コメコン諸国は、その逆にイデオロギーのより強いアプローチ、すなわちショック療法を選択したかにみえる。その結果、かなりの経済マフィアの出現と社会混乱をもたらした。これら新生国家からの対外支援、資金援助さらに先進国の市場開放への要請は道理にかなったことであり、可能な限りその要請に応えるべきである。これらの国が信頼のおける法的体系の維持や通貨供給の効率的な管理といった経済開発の前提条件を確立しなければ、彼らに対する援助も彼ら自らの多大な努力も実を結ばないのだということも明確にしておかなければならない。

 

22. 欧州ならびに北米における市場経済サイクルの下降が異常に長引き、これら社会は、長期にわたる構造的失業と「雇用を伴わない成長」という新たな問題に直面している。成長が回復するという展望も自動的には救済をもたらさないだろう。歴史的にも未曽有に豊かな社会における失業の増大は、ある国々においては少数者に一層の富を急速に集中させ、大量の貧しい人々を生みだした。さらに、所得が必要最小限の支出に達しない「貧しい勤労者」という新しい階層も生まれている。

 

23. 我々は、高水準の雇用それ自体が倫理的・政治的目標なのだという原則を再確認する。ますます多くの人々が社会福祉の支給対象とされていることは、人間性豊かな社会というものに対する我々の理解に反する。こうした国々における成長回復の果実は、対応を放置したばかりに今回の不況の調整過程をさまたげる結果となった、新しい多くの変化の処理に活用されるべきである。


ドレスデン会議出席者
 

1. インターアクション・カウンシルメンバー

ヘルムート・シュミット      (西ドイツ前首相) 議長

福田 赳夫           (日本元首相)   名誉議長

マリア・デローデス・ピンタシルゴ (ポルトガル元首相)副議長

アンドリース・ファンアフト   (オランダ元首相)

オスカル・アリアス・サンチェス (コスタリカ元大統領)

キャラハン卿           (英国元首相)

ミゲル・デラマドリ・ウルタド   (メキシコ元大統領)

マルコム・フレーザー     (オーストラリア元首相)

ケネス・カウンダ        (ザンビア前大統領)

タデウシュ・マゾビエツキー   (ポーランド元大統領)

オルセグン・オバンサンジョ   (ナイジェリア元大統領)

盧 泰愚             (韓国前大統領)

ホセ・サルネイ           (ブラジル元大統領)

ピエール・エリオット・トルドー   (カナダ元首相)

オラ・ウルステン        (スウェーデン元首相)

 

2. 特別ゲスト

マンフレッド・シュトルペ     (独ブランデンブルグ州首相)

カレン・N・ブルテンス     (ゴルバチョフ財団顧問)

黄 華            (中国元外相)

ヘンリー・A・キッシンジャー  (米国元国務長官)

ウイリアム・P・ロックリン  (企業家:米国)

エミール・ファンレネップ     (元OECD事務局長:オランダ)

ロバート・S・マクナマラ (米国元国防長官)

宮崎 勇            (大和総研理事長:日本)

ペータ・ピートハード     (チェコ前首相)

カシミエラ・プルンスキエヌ  (リトアニア前首相)

カレビ・ソルサ          (フィンランド前首相)

トルファルド・ストルテンベルグ  (ノルウェー元外相)

ヤン・ウルバン          (チェコ民主会議議長)

ギオルギ・ヴァシリウ     (キプロス前大統領)

ichiban.jpg (1715 バイト)  mokuji.jpg (1569 バイト)  wpe1.gif (2483 バイト)

markS1.GIF (2214 バイト)

InterAction Council
東京事務局
〒100−0014

東京都千代田区永田町2−10−2ー1114
電話:(03)3505−4527
ファックス:(03)3589−3922
JEMAIL.jpg (1771 バイト)email3d.gif (19981 バイト)